日本大百科全書(ニッポニカ) 「蝶々も止まれ」の意味・わかりやすい解説
蝶々も止まれ
ちょうちょうもとまれ
紙製の蝶を糸でつるし、竹の先につけて蝶が飛ぶように動かす江戸玩具(がんぐ)。1727年(享保12)刊の玩具遊び図『目付絵』に収録されている。幕末の見聞随筆『真佐喜(まさき)のかづら』には、文化(ぶんか)年間(1804~1818)の初めに、「蝶々とまれや菜の葉にとまれ、それとうまった」と声に節をつけてこの玩具を四文で行商した風景を記している。さらに1853年(嘉永6)刊の『守貞漫稿(もりさだまんこう)』(喜田川(きたがわ)守貞著)も、この蝶売りの行商ぶりを伝えており、「江戸の祭礼縁日など人の集まる路上で売り、蝶は削り竹で蝶の形に曲げ、首・胴・羽に紙を張り、紅や紫色に染めてある。大きさは約10~16センチメートル、あるいは約32センチメートルほど。その大小に応じて長さ約1.28~1.60メートル、あるいは約3.20メートルばかりの女竹(めだけ)の頭につけて売る」という意味のことを記している。江戸中期から末期にかけて、子供の玩具として親しまれたらしい。
[斎藤良輔]