改訂新版 世界大百科事典 「蠟人形」の意味・わかりやすい解説
蠟人形 (ろうにんぎょう)
wax figure
waxwork
蜜蠟や獣蠟で作った人形の総称。とくに展示公開を目的とする,等身大で彩色などを施した精巧なものを指すことが多い。神像やデスマスクの製作に蠟を用いることは,つとに古代エジプト,ギリシア,ローマ時代から行われていた。ルネサンス期には鋳造技法の一種である蠟型(シール・ペルデュcire perdue)が完成され,16,17世紀以降は蠟製肖像メダルや彩色蠟浮彫の製作が盛行して,蠟を素材とする造形は広く普及した。蠟人形の展示が一般化するのは18世紀からで,R.スティールによる《タトラー》誌の記事によれば,同世紀初頭にドイツで機械じかけの蠟人形展が開かれたという。アメリカ最初の蠟人形館は,ワイアットJ.Wyattなる人物により,1749年ニューヨークで開設されている。以来,今日に至るまで巡回の蠟人形展ないし常設の蠟人形館は世界各地で開催・開設されており,後者ではタッソー夫人のコレクション(ロンドン)やクレバン美術館(パリ)がとくに有名。単独の人形館のほか,遊園地などに付設されることも多い。蠟人形は,史上有名な人物や事件をモデルにしたものが選ばれ,電動化されたもの,パノラマじたての展示も少なくない。
執筆者:松宮 由洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報