日本大百科全書(ニッポニカ) 「デスマスク」の意味・わかりやすい解説
デスマスク
ですますく
death mask
死者の顔からじかに型取りしてつくった面型。死面(しめん)。生きている人の顔を型取ったものは、ライフマスクlife maskという。古くは、紀元前6、7世紀のエトルリアで、死者崇拝のために蝋(ろう)で顔面を型取り、肖像彫刻の原型とした。今日では一般に、石膏(せっこう)を用いる。すなわち、死の直後、顔面を清め、頭髪などを整え、クリームやポマードなどの油性のものを離型剤として塗布し、顎(あご)の稜線(りょうせん)に沿って土手を築き、前顔面に筆を用いて石膏を塗り型取る。この雌型に石膏を流し込んで、外型を割る。代表的なデスマスクとしては、ベートーベン、日本人では夏目漱石(そうせき)などが知られる。
なお、身体を型取りしたものをボディーキャスティングbody castingといい、西欧では古来しばしば行われてきた。ロダンの『青銅時代』はそれと疑われて物議を醸したが、現代では、イブ・クラインやシーガルなど、これを手段とする作家もいる。
[三田村畯右]