岩石学辞典 「角閃石黒雲母花崗岩」の解説 角閃石黒雲母花崗岩 多くの花崗岩質岩類では,初生的な角閃石と白雲母は同一岩石標本内では決して共存しない[Suzuki : 1962, 1985,鈴木 : 1994].黒雲母は角閃石とも白雲母とも共存するので,鈴木は角閃石黒雲母花崗岩と白雲母黒雲母花崗岩の化学組成を過去の文献から選び比較した.これらの花崗岩の化学組成範囲を比べると,全体としては化学組成が異なるが,互いに重なり合って区別できない部分が存在する.重なる範囲は地域によって異なり,それぞれの地域での花崗岩の生成条件の差によると考えられる[Suzuki : 1962, 1985,鈴木 : 1994].鈴木は化学組成に差がなく鉱物組成が異なる原因として,花崗岩形成の出発物質が異なり,角閃石黒雲母花崗岩はMg, Fe成分に富む物質から,白雲母黒雲母花崗岩はアルカリ,Al成分に富む物質に由来したと推論した.この二種の花崗岩はそれぞれに相当する最低熔融点が存在し,非常に類似した化学組成を持つが,両者の間には超えられない壁があり,最低熔融点は異なった結晶作用の過程によると推測した[Suzuki : 1962, 1985,鈴木 : 1994].日本の花崗岩は,日本を含めた世界全体のものに比べてCaOが多く,K2Oが少ない傾向が見られる. 出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報