翻訳|biotite
雲母の一種。普通鱗片(りんぺん)状結晶であるが、しばしば板状あるいは短柱状の結晶を示す鉱物。断面はほぼ六角形を示す。多型polytype(層状の構造をもつ鉱物のうち単位層の積み重ねの方向の周期が異なるもの)があり、単斜晶系のものがもっとも普通で、六方(三方)晶系のものも知られている。造岩鉱物として広く産出する。花崗(かこう)岩、花崗岩質ペグマタイト、閃緑(せんりょく)岩、斑糲(はんれい)岩、安山岩など各種火成岩中に普通に産する。また、片麻岩、結晶片岩、泥質岩起源のホルンフェルスなどにもよくみられる。現在は雲母グループの再定義により、鉱物学上は黒雲母という種名はない。黒雲母はおもに金雲母と鉄雲母の中間成分のもので、Mg>Fe2+の場合は金雲母、Fe2+>Mgの場合は鉄雲母とよばれる。またアルミニウムより3価の鉄が多い場合は別の種類として分類される。英名は、雲母の光学的研究を行ったフランスの物理学者ビオJ. B. Biotにちなみ命名された。
[松原 聰]
雲母のうちでは,最もふつうのものの一つ。金雲母KMg3(Si3Al)O10(OH)2とアナイトannite KFe3(Si3Al)O10(OH)の間の固溶体であるが,Fe,MgをAlで置換したものも多い。このほか,Fe,MgをMn,Fe3⁺,Ti4⁺で置換したもの,KをNaで,OHをFで置換したものなど,きわめて複雑な化学組成をもつ。基本単位層1層の単斜晶系のものがふつうであるが,2層単斜晶系,3層三方晶系のほか31層までのポリタイプが知られている。結晶は平板状,短柱状でしばしば六角形の切口を示す。光軸角は0度に近い。へき開は底面に完全。物理的性質は上記の化学組成変化により変化し,モース硬度2.5~3.0,比重2.7~3.4。色は黒,褐色,赤褐色,緑色で,透明からほぼ不透明。花コウ岩などの火成岩,変成岩にごくふつうに産する。ペグマタイト中には巨大な結晶を産することがある。biotiteの名はフランスの物理学者ビオJ.B.Biotにちなむ。
執筆者:武田 弘
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…層間にCaなど2価の陽イオンの入ったものはゼイ(脆)雲母と呼ばれている。
[おもな種類と理想化した化学組成]
(1)二・八面体雲母 白雲母muscovite KAl2(Si3Al)O10(OH)2 ソーダ雲母paragonite(ナトリウム雲母,パラゴナイトとも呼ぶ)NaAl2(Si3Al)O10(OH)2(2)三・八面体雲母 金雲母phlogopite KMg3(Si3Al)O10(OH)2 黒雲母biotite K(Fe,Mg)3(Si3Al)O10(OH)2 アナイトannite KFe3(Si3Al)O10(OH)2 イーストン石eastonite KMg2.5Al0.5(Si2.5Al1.5)O10(OH)2 シデロフィライトsiderophyllite KFe2.5Al0.5(Si,Al)O10(OH,F)2 鱗雲母lepidolite(紅雲母,リシア雲母,レピドライトとも呼ぶ)KLi2AlSi4O10F2からK(Li,Al)2.5(Si,Al)(OH,F)2
[結晶学的および鉱物学的性質]
雲母は平板状にわれやすく,六角板状に近い外形を示すが,他の結晶面はあまり発達しない。また双晶していることが多い。…
…層間にCaなど2価の陽イオンの入ったものはゼイ(脆)雲母と呼ばれている。
[おもな種類と理想化した化学組成]
(1)二・八面体雲母 白雲母muscovite KAl2(Si3Al)O10(OH)2 ソーダ雲母paragonite(ナトリウム雲母,パラゴナイトとも呼ぶ)NaAl2(Si3Al)O10(OH)2(2)三・八面体雲母 金雲母phlogopite KMg3(Si3Al)O10(OH)2 黒雲母biotite K(Fe,Mg)3(Si3Al)O10(OH)2 アナイトannite KFe3(Si3Al)O10(OH)2 イーストン石eastonite KMg2.5Al0.5(Si2.5Al1.5)O10(OH)2 シデロフィライトsiderophyllite KFe2.5Al0.5(Si,Al)O10(OH,F)2 鱗雲母lepidolite(紅雲母,リシア雲母,レピドライトとも呼ぶ)KLi2AlSi4O10F2からK(Li,Al)2.5(Si,Al)(OH,F)2
[結晶学的および鉱物学的性質]
雲母は平板状にわれやすく,六角板状に近い外形を示すが,他の結晶面はあまり発達しない。また双晶していることが多い。…
※「黒雲母」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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