化学辞典 第2版 「計算機実験」の解説
計算機実験
ケイサンキジッケン
computer experiment
計算機を用いた思考実験の総称.計算機シミュレーションとほとんど同義.自然現象,社会現象などの複雑な系の諸問題を調べるため,計算機を用いてモデル化し,パラメーターを調節したりモデルを修正したりして,系の挙動を再現する.はじめは物理分野で,おもに多自由度系の物理的性質を直接計算により調べることをめざし,理論と実験に並ぶ第三の物理学として1980年代に認知された.化学分野の計算機実験としては,分子軌道法計算,分子動力学計算,分子力学計算,分光学におけるスペクトルシミュレーションがある.計算機実験の利点としては,適切なモデルを設定することにより,問題の本質をとらえることができること,現実の系では実現不可能な条件下での知見が得られること,解析的に厳密解が得られない問題に対しての近似理論の検討や改良の規範となりえることなどがあげられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報