理論(読み)りろん(英語表記)theory

翻訳|theory

精選版 日本国語大辞典 「理論」の意味・読み・例文・類語

り‐ろん【理論】

〘名〙
① (━する) 物事筋道道理などについて論じること。また、論じ合うこと。論争すること。また、その議論。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
四河入海(17C前)一七「此理を我就聖求等諸公問申さんぞ。さて先づ我れ理論すべきぞ」 〔鄭谷‐故少師従翁隠厳別墅詩〕
② (theory訳語) ある物事に関して、原理・法則をよりどころとして筋道を立てて考えた認識体系。また、実践に対応する純粋な論理知識。純観念的に組み立てられた論理。
自由之理(1872)〈中村正直訳〉一「苟も本心より出たる理論ならば、たとひ今まで世間にあらざる説を一人にて立たりともこれを称して異端邪説とはいふべからざる筈なり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「理論」の意味・読み・例文・類語

り‐ろん【理論】

個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系。また、実践に対応する純粋な論理的知識。「理論を組み立てる」「理論どおりにはいかない」
[類語]論理セオリー原理プリンシプル公理定理理屈ことわり道理事理条理純理理法ロジック

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「理論」の意味・わかりやすい解説

理論
りろん
theory

諸法則を体系化したものをいう。もっとも普通には、理論は実際と対比され、実際は理論とは違う、などといわれる。これは、理論というものには一般になんらかの理想化が含まれており、したがってそのままでは実際には使えない、ということの皮肉を込めた表現である。しかし、よりたいせつなのは、経験と対比された理論である。

 科学の研究は個々の経験法則の探究から始まる。そして、たとえば気体については、ボイルの法則とかシャルルの法則とかが発見された。これらの法則はいずれも、気体の圧力、体積、温度に関する法則である。そして、それら三つの量は、それぞれ経験的に測定されうるものである。したがってそれらの法則は、経験的に測定されうる量の間の経験的に確立されうる法則であり、それゆえ経験法則といわれる。ところが、一群の経験法則が発見されると、次の段階として、それらの法則を統一的に説明しようということになる。そしてそのためには、先の例でいえば、気体というものをより根元的に考えなくてはならないことになる。そこで科学者は、気体というものは乱雑に運動している分子の集団である、と考え、それぞれの分子にニュートン力学を適用した。かくしてそこに「気体運動論」という理論が成立したのである。ところが、分子というものは、われわれの経験できるものではない。それは、経験法則を説明するために、科学者によって考えられたものである。したがって、気体運動論という理論を構成している諸命題(すなわち諸法則)は、経験的に確立されうる法則ではない。すなわち、科学者は経験法則を説明するのに、その背後に隠れている非経験的法則でもってするのである。このような非経験的法則が「理論法則」といわれ、理論法則の体系が「理論」といわれるのである。しかし実は、非経験的法則でもって経験法則を説明するためには、両者をつなぐ命題が必要である。それが「対応規則」といわれるものである。先の例では、分子の運動エネルギーの平均値はその気体の絶対温度に比例する、というのがその一例である。すなわち、われわれは経験法則の背後に、対応規則を通して非経験的な理論法則を、その経験法則の実の姿としてみるのである。そしてこれが、経験法則についての理論的説明にほかならない。したがって、経験と対比された意味での理論というものは、経験の背後にあって、経験を「実は理論的にはこうなのだ」として、説明するものなのである。

[黒崎 宏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「理論」の読み・字形・画数・意味

【理論】りろん

論理的な立論。〔魏書、崔光伝〕光學強辯、尤も理論を好む。人倫名得失のに至りては、(かく)して之れを論じ、一毫を以て物に假らず。

字通「理」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android