貧血症と慢性輸血に伴う鉄過剰症

内科学 第10版 の解説

貧血症と慢性輸血に伴う鉄過剰症(造血器腫瘍治療とその補助療法)

(2)貧血症と慢性輸血に伴う鉄過剰症
 造血障害による貧血は慢性に経過することも多く,濃厚赤血球の定期的な輸血で対応する.長期にわたる強い貧血は全身の組織に低酸素状態をもたらし,心拍出量が増加・心肥大を招く.心拍出量はヘモグロビンHb)が7 g/dL以下になると上昇してくるので,心疾患の合併がなければ通常Hb≧7 g/dLを維持するように輸血を行う.欧米では,エリスロポエチン製剤が使用できるが,日本では腎性貧血以外に保険適用がない.
 輸血にはじんま疹発熱などの副作用のほか,頻回の輸血を要する例では鉄過剰症が起こる.血液1 mL中にはHb鉄が0.5 mg含まれ,1単位(200 mL)の輸血で100 mgの鉄が体内に直接入る.造血障害のある例では,寿命の尽きた赤血球が網内系組織で代謝され放出された鉄が再利用されず心臓,肝臓などの重要臓器に沈着し臓器障害を起こす(二次性ヘモクロマトーシス).血清フェリチンが上昇し,鉄過剰となった場合は,鉄キレート薬(デフェロキサミン,デフェラシロクス)を使用する.[田村和夫]
■文献
Coiffier B, Altman A, et al: Guidelines for the management of pediatric and adult tumor lysis syndrome: an evidence-based review. J Clin Oncol, 26: 2767-2778, 2008.
日本癌治療学会編:制吐薬適正使用ガイドライン,第1版,金原出版,東京
2010.日本臨床腫瘍学会編:発熱性好中球減少症(FN診療ガイドライン南江堂,東京,2012.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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