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貧血 ひんけつ

妊娠・子育て用語辞典の解説

ひんけつ【貧血】

妊娠の全期間を通して、約3割の人は貧血になると言われています。そして妊婦さんの貧血の9割は「鉄欠乏性貧血」。血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンが少なくなった状態で、いってみれば血液が薄くなるのです。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(愛育病院院長)、子育て編:多田裕(東邦大学医学部名誉教授) 妊娠・子育て用語辞典について 情報

百科事典マイペディアの解説

貧血【ひんけつ】

血流中の赤血球数あるいは血色素量が減少している状態。出血,溶血,赤血球形成不全などをきたす種々の疾患が原因となる。軽度では無症状だが,高度になると皮膚粘膜が蒼白(そうはく)化し,倦怠(けんたい)感,めまい,頭痛,耳鳴り,注意力減退などの精神症状などをきたす。
→関連項目造血薬鉄剤ヘモグロビン輸血老人病

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とっさの日本語便利帳の解説

貧血

赤血球に含まれる色素、ヘモグロビンが低下した状態。約七〇%が、鉄の欠乏により骨髄でのヘモグロビン合成が障害されるために起こる鉄欠乏性貧血。このほか、赤血球の形成不全による貧血や赤血球の破壊による貧血など、様々な型がある。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

栄養・生化学辞典の解説

貧血

 赤血球減少症ともいう.ヘモグロビン量が正常より少ない状態.諸種の原因で起こる.

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家庭医学館の解説

ひんけつ【貧血 (Anemia)】

◎赤血球(せっけっきゅう)やヘモグロビンが減少
◎貧血の症状
◎貧血の検査
◎貧血の診断
◎貧血の原因

◎赤血球(せっけっきゅう)やヘモグロビンが減少
 血液が肺の中を通過する間に、血液中の二酸化炭素はすてられ、酸素がとり入れられます(ガス交換)。全身の組織、細胞は、動脈を通って送られてくるこの酸素の豊富な血液から、酸素と栄養分を受けとり、エネルギー源としてみずからを維持しています。
 肺で血液中に酸素をとり入れることができるのは、血液の中にある細胞成分(血球(けっきゅう))のうち、赤血球のはたらきによります。
 血液が肺の中を通過するとき、肺に吸い込まれた空気中の酸素が、赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素(けっしきそ))というたんぱく質と結合します。
 全身の組織や細胞が、酸素と栄養分を利用すると、排気ガスともいうべき二酸化炭素が生じます。この二酸化炭素と結合して、二酸化炭素を静脈から肺へと運んでくるのも赤血球であり、ヘモグロビンなのです。
 貧血(ひんけつ)とは、この赤血球内のヘモグロビンの量が、正常よりも減った状態をいいます。
 貧血というと、脳貧血(のうひんけつ)と同じと思っている人もいますが、脳貧血というのは脳を流れる血液の量が減り、顔が青白くなって冷や汗が出て、意識が薄れたりする状態をいい、まったく別の状態です。ただし、貧血の人が脳貧血をおこすことはあります。
 貧血になると、運ばれてくる酸素の量が減るために、全身の組織や臓器が酸素不足になります。酸素が不足すると、いくら栄養分が足りていても、それらが結合して生じるエネルギーは少なくなり、はたらきが低下してしまいます。こうして、さまざまな症状が現われてくることが多いのです。
 また、血液が酸素不足になって、酸素の薄い状態になると、それを全身に送る血液の量で補おうとするために、心臓に負担がかかったり、肺でのガス交換を無理に増やそうとして肺の負担が多くなったりします。
 貧血の症状には、こうしたメカニズムがはたらくために現われるものもあります。

◎貧血の症状
 からだがだるく、寒さを人一倍感じるようになってきます。心臓や肺に負担がかかるので、正常であればなんでもない運動、たとえばのぼりなれている階段や坂でも、どきどきしたり(動悸(どうき))、息切れを感じるようになります。
 貧血が進行すると、皮膚や粘膜(ねんまく)の赤みがなくなり、少し黄色みをおびてきます。そのほか下肢(かし)(脚(あし))が少しむくんだり、微熱が出ることもあります。
 まわりの人から「顔色が悪い」とか「だるそうだ」などといわれることもよくあります。
 ときには食欲がなくなり、吐(は)き気(け)などを感じることもあります。
 このような症状は、貧血の原因に関係なく、どのような貧血にもみられるので、貧血の一般症状と呼ばれます。
 貧血と思われる症状があるときは、一刻も早く医師にかかり、検査を受けるべきです。おとなは内科、子どもは小児科、妊娠中の女性は産婦人科を受診するのがよいでしょう。
 しかし、貧血をおこしている人のなかには、まったく症状がなかったり、症状があっても気づかずにいて、健康診断や献血(けんけつ)の際の血液検査で、偶然にみつかるという人もかなりいます。

◎貧血の検査
 貧血かどうかは、腕などの静脈から2~3mℓの血液をとり(末梢血検査(まっしょうけつけんさ))、その中の赤血球の数とヘモグロビンの量を調べれば、簡単にわかります。血液の比重を調べ、いわば血液の濃さから判断する場合もありますが、この検査だけでは不十分です。
 赤血球の数とヘモグロビンの量、とくにヘモグロビン量の測定が、貧血を診断するためには欠かせません。
 貧血の検査は、どこの医院や病院でもできますし、採血の前にとくに注意しなければならないということもありません。採血してから、ふつう2~3日で結果がわかります。

◎貧血の診断
 正常なヘモグロビンの量は、血液1dℓ中、成人男性で14~18g、成人女性で12~16gです。これが、男性は14g以下、女性は12g以下になった場合、貧血と診断します。ただしお年寄りは、11g以下で貧血とします。
 とくに10g以下の貧血は、医師の治療が必要な貧血です。
 正常な赤血球の数は、血液1mm3中、おとなの男性で450万~550万、おとなの女性で400~450万です。貧血のときは、男性では400万以下、女性では350万以下である場合が多いのです。

◎貧血の原因
 赤血球は、骨の内部にある骨髄(こつずい)という部分でつくられ、約120日たつと、おもに脾臓(ひぞう)でマクロファージという細胞に食べられて破壊されます。
 骨髄で赤血球がつくられるには、ビタミン12と、葉酸(ようさん)の助けが必要です。また、ヘモグロビンがつくられるためには鉄分が必要です。
 したがって、骨髄にある造血細胞(ぞうけつさいぼう)の異常、ビタミンB12・葉酸・鉄分の不足、マクロファージによる赤血球の破壊が活発になりすぎるといった原因によって、貧血がおこります。
 貧血は原因によって、つぎのような種類に分けられています。
■鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)
 体内の鉄分が不足したためにおこる貧血です(「鉄欠乏性貧血」)。
■巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)
 ビタミンB12や葉酸などの不足によっておこる貧血をいいます(「巨赤芽球性貧血」)。
溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)
 なんらかの理由で、マクロファージによる赤血球の破壊が進んでおこる貧血をいいます(「溶血性貧血」)。
■再生不良性貧血(さいせいふりょうせいひんけつ)
 骨髄のはたらきが異常で、赤血球などが十分につくれなくなっておこる貧血です(「再生不良性貧血」)。
■異常ヘモグロビン症
 遺伝子の異常で、ヘモグロビン(血色素)にも異常があるためにおこる貧血です(「異常ヘモグロビン症」)。
■二次性貧血(にじせいひんけつ)(続発性貧血(ぞくはつせいひんけつ))
 他の病気にともなっておこる貧血です(「二次性貧血(続発性貧血/症候性貧血)」)。

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食の医学館の解説

ひんけつ【貧血】

《どんな病気か?》


〈貧血は、ヘモグロビンの減少している状態〉
 血液は赤血球(せっけっきゅう)、白血球(はっけっきゅう)、血小板(けっしょうばん)、血漿(けっしょう)から成り、体内を留まることなく流れ続けています。血液は肺を通過するときに、余分な二酸化炭素を除去し、酸素を取り入れて、また全身を巡ります。
 そして、全身の細胞に酸素とエネルギー源を供給し、同時に老廃物を除去するなど、人体の機能にとっては、とてもたいせつな役割をはたしています。
 この流れのなかで、肺で酸素を受け取る役割をするのが、赤血球です。最初に赤血球中のヘモグロビンというたんぱく質が酸素と結合し、体内に酸素を供給します。
 そしてヘモグロビンはそこで生じた二酸化炭素と再び結合し、肺へもどるのです。
 貧血(ひんけつ)は、このヘモグロビンの量が基準値よりも減少している状態をいいます。
◆貧血とみなされるヘモグロビン量
 成人男子‥‥‥13g/dl以下
 成人女子‥‥‥12g/dl以下
 妊婦‥‥‥‥‥11g/dl以下
 そのために、十分な酸素が全身に供給されず、各機能の働きが低下して、さまざまな症状を引き起こすのです。
 貧血の一般症状は、だるい、寒け、動悸(どうき)や息切れ、食欲不振や吐(は)き気(け)などの自覚症状のほか、顔色が悪い、目や口の粘膜(ねんまく)が白いなどの外見的な症状もあります。

《関連する食品》


〈鉄欠乏性貧血には十分なエネルギーと鉄分の摂取を〉
 ヘモグロビンが減少する原因としては、ヘモグロビンの構成要素である鉄分の不足、赤血球をつくる骨髄(こつずい)の異常、赤血球の破壊など、いくつかあります。
 その原因によって貧血の種類がわけられ、一般症状に加え、別な症状もみられるようになります。
 しかし、貧血のなかでもっとも多いのは、鉄分の不足による鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)です。
 一般に、貧血というと、この鉄欠乏性貧血を意味することがほとんどです。
 とくに若い女性に多くみられ、5人に1人は貧血だといわれているほどです。
 もともと鉄分は吸収されにくい物質で、摂取した10%しか吸収されません。さらに、女性は月経時に出血するために男性の50%も多くの鉄分が、また妊婦にいたってはおよそ男性の約3倍の鉄分が必要になります。
 それゆえに、スタイルを気にしてのダイエットや、かたよった食生活により、貧血を起こしやすくなるのです。
◆1日の鉄分の推奨量
 成人男子‥‥‥‥‥‥‥7.0~7.5mg
 成人女子‥‥‥‥‥‥‥10.5mg
 妊婦(前期)‥‥‥‥‥8.5~9.0mg
 妊婦(中期/後期)‥‥21.0~21.5mg
 授乳期‥‥‥‥‥‥‥‥8.5~9.0mg
 鉄欠乏性貧血の場合、前にあげた一般症状に加え、爪(つめ)が平たくなったりスプーン状になる、舌がただれたり、肩こりや頭痛が現れたりすることもあります。
 出血をともなう場合や急激な貧血症状には鉄剤の投与が行われますが、改善や予防には体重やスタイルを気にせず、毎日3食きちんと食事をすること、必要な栄養をしっかりととることがたいせつです。
〈緑黄色野菜と組み合わせ、効率的に鉄分を摂取〉
○栄養成分としての働きから
 鉄分が不足して起こるだけに、鉄の補給は欠かせません。鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があり、吸収率が異なります。
 レバーなどの内臓肉や肉類、カツオやブリなどの赤身の魚、シジミやアサリ、ハマグリ、カキなどの貝類に含まれる鉄分をヘム鉄といいます。一方、ホウレンソウやコマツナ、シュンギク、パセリ、シソなどの野菜、豆類に含まれる鉄分を非ヘム鉄といいます。吸収率はヘム鉄のほうが、かなりまさります。
 両方ともビタミンCといっしょに摂取すると吸収しやすくなるので、ブロッコリーやピーマンなどの緑黄色野菜をじょうずに組み合わせて食べると効果的です。
 同様に動物性のたんぱく質も非ヘム鉄の吸収を促進します。とくに牛肉と鶏肉にその効果がみられます。同時にたんぱく質も、ヘモグロビンの重要な構成要素なので、十分な量を摂取したい栄養素です。
〈ローヤルゼリー、クマ笹エキスが造血、貧血を予防〉
○漢方的な働きから
 漢方では、血液を浄化させるために、カルシウムをたっぷり摂取することもたいせつとされています。
 キクラゲにはその作用が十分に含まれると同時に、漢方的にも白キクラゲは血液浄化の薬効がとくにすぐれているとされています。料理に使用するほか、煎(せん)じておいてあたためて飲むといいでしょう。
 造血作用をうながすには、漢方的に効果があるとされている栄養補助食品なども役に立ちます。
 ローヤルゼリーがその1つで、造血作用のほか、とくに婦人科系疾患などによる貧血には効果的とされています。
 同様にクマ笹エキスにも造血作用がありますが、これはローヤルゼリーとはちがい、末梢(まっしょう)血管を拡張する働きがあるため、全身の隅々まで酸素を送り込むことで貧血を予防・解消します。
 意外にも、皮膚疾患に効果があるとされている漢方薬、ドクダミも貧血に効果があります。毎食前にコップ1杯の煎じたドクダミを飲むようにしましょう。
 このほかにも、漢方薬ではアカヤジオウが貧血の特効薬といわれています。
 乾燥させたアカヤジオウの根を煎じて飲みますが、薬用酒として地黄酒(じおうしゅ)を代用することもできますし、地黄などの生薬(しょうやく)が含まれる十全大補(じゅうぜんたいほ)酒も貧血の予防効果があります。
 また、たまごの殻も貧血によいと昔からいわれています。細かく砕いたたまごの殻(から)をきつね色になるまで煎(い)り、さらに粉末状にしてぬるま湯に溶かして飲むのです。
○注意すべきこと
 コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるタンニンは、鉄分と結合して、鉄分の吸収をさまたげてしまうので、鉄剤服用時にはお茶やコーヒーでとらないほうがよいといわれてきました。しかし、鉄剤に含まれる鉄が多いため、あまり影響がないのではともいわれています。気になる場合は、ぬるま湯で服用しましょう。

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世界大百科事典 第2版の解説

ひんけつ【貧血 anemia】

一般に貧血といえば,〈立ちくらみ〉など起立性低血圧症による,いわゆる脳貧血(失神)をさすことが多いが,医学的には,血液中のヘモグロビン濃度が低くなった状態をいう。また,身体の一部分に血がなくなることも貧血ということがあるが,この場合は,ふつう虚血といって区別される。血液中の赤血球には鉄を含んだタンパク質であるヘモグロビン(血色素)があり,これに酸素が結合して,体内に酸素が供給される。したがって,ヘモグロビンの原料である鉄そのものが不足するか,赤血球産生のしくみに異常があって赤血球の産生が足りなかったり不完全な赤血球ができるか,出血や溶血(赤血球が破壊されること)などによって赤血球の量やヘモグロビン濃度が減ると,体内の組織は低酸素状態に陥る。

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大辞林 第三版の解説

ひんけつ【貧血】

血液中の赤血球数または血色素量が正常値以下に減少した状態。鉄分やビタミンの欠乏、造血器官の疾患、失血など種々の原因によって起こる。顔色が悪くなり、頭痛・耳鳴り・めまい・動悸・息切れ・倦怠などを呈する。
ある部分に流入する動脈性の血液量が減少した状態。血管運動神経の調節障害と考えられている。脳貧血はこの一種。またショック時には四肢の貧血が起こる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

貧血
ひんけつ
anemia

正確には,循環している赤血球数とヘモグロビン量が絶対的に減少した状態を貧血というが,実際には,単位体積の血液中の赤血球数またはヘモグロビン濃度が減少した状態をいう。症状は,顔色や皮膚の蒼白,運動時の息切れ,心悸亢進,舌炎,嚥下困難,発熱,黄疸,出血傾向など。治療には,原因の除去 (出血の防止,駆虫,感染症の治療など) ,脾臓摘出,ACTH,副腎皮質ホルモンの投与,欠乏物質の補給 (ビタミン B12 ,鉄剤など) ,輸血などが必要に応じて行われる。貧血には種々のものがあり,M. M.ウィントローブは次のように分類している。これらは,各種の血液検査によって鑑別できる。 (1) 大赤血球性貧血 赤血球の平均容積が正常より大きい貧血で,悪性貧血,葉酸欠乏による貧血などがこれに属する。 (2) 正赤血球性貧血 赤血球の容積が正常範囲内にあるもので,急性出血,溶血性貧血,再生不良性貧血,妊娠による貧血などがある。 (3) 低色素性,小赤血球性貧血 赤血球の容積が正常より小さく,ヘモグロビンの含有量も少いもので,鉄欠乏性貧血,サラセミア,鉄芽球性貧血などが属している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

貧血
ひんけつ

血液の一定容積中の赤血球つまりはヘモグロビン(血色素ともいい、赤血球全重量の3分の1を占める)が減少している状態をさす。正常範囲は、赤血球は1立方ミリメートルに400万~500万個、ヘモグロビンは1デシリットル中に12~16グラムである。赤血球が1立方ミリメートル中350万個以下、ヘモグロビンが1デシリットル中11グラム以下であれば確実に貧血といえる。ヘモグロビンの減少により酸素と二酸化炭素のガス交換が低下するため、組織では酸素が減少して貧血性の低酸素状態となる。紛らわしいものに脳貧血という状態があるが、これは、脳を流れている血液量が減少して脳の低酸素症をおこし、一過性の意識障害を伴う。脳だけについていえば血液が少なくなっているので貧血であるが、体全体からみれば赤血球、ヘモグロビンは正常である。したがって、貧血は全身的なもので、局所的な循環の低下による虚血は貧血とはいわない。[伊藤健次郎]

原因・分類

貧血にはいろいろな原因があるが、赤血球が減少する場合と、赤血球内に含まれているヘモグロビンの合成が低下する場合とがある。赤血球が減少する原因としては、骨髄内で赤血球の産生が低下する場合(再生不良性貧血、造血面積の狭小化による場合、幼若赤芽球の成熟ができない場合としての悪性貧血)、赤血球の破壊が亢進(こうしん)した場合(溶血性貧血)、出血で赤血球を失った場合(出血性貧血)などがある。また、赤血球がつくられても、中のヘモグロビンがつくられない場合としては、鉄が不足した鉄欠乏性貧血、ヘモグロビンをつくっているタンパク部分に異常があるサラセミア、ビタミンB6の欠乏、δ(デルタ)‐アミノレブリン酸(ALA)合成酵素の欠乏によっておこる鉄芽球性貧血、さらに、鉄を運搬しているトランスフェリンの欠乏症、鉛中毒などがある。
 貧血にはこのような発生機序別の分類があるが、このほかに、以前から用いられている赤血球係数による分類がある。これは、色素指数、平均容積、平均ヘモグロビン量、平均ヘモグロビン濃度によるもので、ヘモグロビン、赤血球、ヘマトクリット(赤血球容積率)から計算される。(1)小球性低色素性貧血 血色素合成障害による貧血がこれに属する。(2)大球性高色素性貧血 赤芽球の成熟障害による貧血がこれに属する。(3)正球性正色素性貧血 赤芽球を含めて赤血球の産生が低下する場合、溶血による場合、出血による場合がこれに属する。また続発性貧血もこれに属する。
 この分類によると、(1)と(2)は鉄欠乏性貧血と、ビタミンB12および葉酸欠乏性貧血、(3)は再生不良性貧血、悪性血液疾患、溶血性貧血、続発性貧血などが代表的疾患である。(1)と(2)は欠乏物質の補給で容易に完治するもの、(3)は簡単には治らない貧血群であり、貧血の予後までわかる都合のよい分類法である。なお、続発性貧血というのは、他に疾患があって、その症状の一部として現れた貧血のことで、発生機序は前記のものが複合して原因となっている。[伊藤健次郎]

症状

貧血は全身の臓器組織の酸素欠乏であるために、どの臓器も機能が低下するが、とくに酸素消費の多いところが先に症状として現れやすい。そのような臓器は中枢神経(脳)、心筋、呼吸器(肺)、消化器(胃腸)、生殖器(卵巣)などで、運動時には全身の筋肉も参画する。したがって、頭痛、頭重、めまい、耳鳴り、注意力低下、集中力低下、傾眠(強い眠気)、記銘力(時間的にごく近い体験の記憶力)低下、心悸亢進(しんきこうしん)(動悸)、狭心症様の胸痛、呼吸困難、息切れ、食欲不振、下痢、便秘、るいそう(病的にやせる)、生理不順、疲労、倦怠(けんたい)、肩こり、そしてさらに浮腫(ふしゅ)が出やすくなり、最低血圧が下降し、心臓が拡張して雑音が出現し、静脈でも雑音が聞かれるようになる。顔は蒼白(そうはく)、粘膜も蒼(あお)白く、唇の鮮やかな赤みが消失する。貧血がゆっくり進行するときは、体がそれに慣れて順応していくために、自覚症状は軽く、赤血球が200万個以下になっても、普通に仕事をしている例もある。しかし、運動時、歩行時、階段を昇るときなどには、かならず動悸とか呼吸困難、胸痛などが出現し、運動を停止しても健康者のように速やかに元に戻ることはなく、回復するのに時間がかかる。
 血液が一時に大量に失われると急性失血性貧血をおこし、血球とともに血漿(けっしょう)も血管外に出てしまうために、血管が虚脱に陥って血圧が低下し、脈拍が小さく頻数となり、意識が混濁からさらに消失して昏睡(こんすい)になり、やがては死亡する。一般に全血液量の3分の1(1000~1500ミリリットル)が一時に失われると、貧血性ショック(前記の症状が激しくおこる)をおこして生命が危険となる。慢性的に少量ずつ出血が続いている場合は、それに対応して赤血球がつくられ補給されるので貧血はおこりにくいが、血液中の赤血球には鉄分が含まれており(1ミリリットルの赤血球は1ミリグラムの鉄に相当する)、漸次体内の鉄が欠乏して、ついには鉄欠乏性貧血が発生することになる。[伊藤健次郎]
鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンのヘムをつくるために鉄は必須(ひっす)の物質であり、その欠乏は小球性低色素性貧血の原因となる。食品中に10~20ミリグラム含まれている鉄分は、胃内の消化でイオン化され、おもに十二指腸で吸収されたのち、トランスフェリンに結合して運ばれる。おもに骨髄でヘモグロビン合成に用いられるほか、一部は筋肉のミオグロビン、ヘム酵素の合成にも用いられ、不必要な分は貯蔵される。そして1日に1ミリグラムぐらいが、爪(つめ)、毛髪、剥離(はくり)する上皮細胞などに混じって体外に出ていく。出血があると、大量の鉄を喪失するほか、妊娠、分娩(ぶんべん)、授乳を経験するたびに約1000ミリグラム(貯蔵鉄量とほぼ同量)が失われる。また、思春期には体の成長に伴う造血促進により鉄の必要量が増加する。このような鉄の代謝、需要量の増加などに関係して鉄分が欠乏するが、とくに思春期から閉経期までの女性は月経に伴う鉄欠乏に傾きやすい。また、男女ともに原因として重要なものは、癌(がん)、潰瘍(かいよう)、痔(じ)などからの出血で、女性では子宮筋腫が原因になりやすい。鉄欠乏性貧血は慢性の貧血で、前述の貧血の症状が現れるほかに、鉄の欠乏のための症状が加わる。鉄欠乏性無力症として、強い無力感、倦怠感、疲労感があり、ヘム酵素欠乏のために爪の扁平脆弱(へんぺいぜいじゃく)化、スプーン様の変形がみられ、口角のびらん、白毛のほか、咽頭(いんとう)、舌、食道入口部の粘膜の異常による嚥下(えんげ)痛などが特有で、これらは貧血がなくても鉄欠乏のみでも出現するので注意を要する。診断には、貧血の性質をみて、血清鉄、トランスフェリン、フェリチン(貯蔵鉄)を測定して参考にするが、血清鉄の著減と、トランスフェリンの増加、フェリチンの著減がみられる。[伊藤健次郎]
悪性貧血
ビタミンB12、葉酸の欠乏によっておこる大球性高色素性貧血である。ビタミンB12は動物性食品中に含まれ、胃液中の内因子と結合してから回腸で吸収され、トランスコバラミンと結合して体内を運ばれ、葉酸と協力して体細胞の分裂成熟に役だっている。また、神経組織の代謝に必須のものである。胃液中の内因子が欠乏したり、胃を全部切除したり、あるいは妊娠などで消費が増加した場合、または腸内細菌によって摂取され尽くしたりすると、欠乏して貧血をおこす。この際は白血球も血小板も減少する。骨髄の中は、分裂成熟のできない大きい赤芽球(巨赤芽球)や顆粒(かりゅう)球(巨大好中球)などで満たされる。この場合は巨赤芽球性貧血ともいわれる。そのほか、脊髄索(せきずいさく)が冒されて歩行ができなくなったり、脳細胞が変性して精神症状が現れる。舌粘膜が萎縮(いしゅく)して舌炎(ハンター舌)、下痢などの消化不良、胃の塩酸が完全に消失し、白毛、黄疸(おうだん)、出血傾向を伴う。葉酸は緑色野菜に多く含まれ、小腸から吸収される。欠乏することはまれであるが、アルコール中毒者、吸収不全症などでみられることがあり、また妊娠時にも欠乏しやすい。神経症状を欠くほかはビタミンB12欠乏と同様であるが、B12欠乏は高齢者におこるが、葉酸欠乏は全年代におこりうる。[伊藤健次郎]
溶血性貧血
赤血球が120日の寿命を保てないで崩壊するためにおこる。その原因は多いが、先天的に球状赤血球や楕円(だえん)赤血球をつくるもの、また先天的に赤血球酵素の欠乏した場合、後天的に赤血球抗体ができた場合、血液毒が作用した場合、心臓とか血管に異常のある場合、異常血色素症、やけどなどである。もっとも多いのは遺伝的球状赤血球症と、後天的自己免疫性溶血性貧血である。貧血とともに溶血性黄疸を併発し、先天性のものは小・中学生時代から症状が現れ、脾腫(ひしゅ)を伴い、胆石の合併が多い。[伊藤健次郎]
再生不良性貧血
骨髄の造血機能が低下して全血球数が減少する、治りにくい貧血である。[伊藤健次郎]
続発性貧血
これに属する腎(じん)性貧血は尿毒症の程度と並行した貧血で、エリスロポエチンの産生が停止したためにおこると考えられる。ほかに、リウマチ性疾患、感染症、内分泌異常、悪性腫瘍(しゅよう)などに伴うものがある。[伊藤健次郎]
小児貧血
小児期は成人と異なって、急激な成長が行われているが、各臓器の機能は不完全で、すべてにわたって影響を受けやすく、貧血も発生しやすい。貧血の種類や発生機序は成人と変わらないが、成人に発生しやすいものは小児ではまれである。また成人と同じ血液像になるのは学童期で、それ以前は顆粒球、リンパ球の比が異なる。小児特有の貧血に、長すぎる授乳期間による食事性貧血とか、小児仮性貧血(血管の収縮による蒼白)、ファンコニー貧血(形態異常を伴う先天的疾患)などがあり、また、遺伝的血液疾患は学童期から発病してくる。[伊藤健次郎]

治療

貧血の治療法は原因によって異なる。鉄欠乏、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏にはそれぞれ欠乏したものを補給し、十分貯蔵ができるまで続けて再発を防ぐ。副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤は抗体による貧血に用いられ、脾臓の摘出は遺伝性球状赤血球症に絶対必要である。根治療法のない貧血には輸血療法を行うが、必要最小限にとどめ、また、白血球や血小板の混じらない赤血球だけを用いるのがよい。過剰の輸血は造血機能を低下させる一方、鉄分の過剰投与になる。[伊藤健次郎]

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世界大百科事典内の貧血の言及

【血液】より

…広い意味では,血球の産生や破壊に関係する骨髄,脾臓,リンパ節の病気も含まれる。(1)赤血球の異常による病気 赤血球の数が減り,その結果血色素による酸素運搬力が低下したものが貧血である。赤血球を産生する能力が低下したり,あるいは産生は十分でも寿命が短縮して破壊が亢進すると貧血になる。…

【子宮筋腫】より

…おもな症状は,筋腫が子宮に発生することからも理解できるように,子宮内膜からの周期的出血による月経の異常である。とくに過多月経(月経の量が多い),月経困難症(月経のときに下腹とか腰が痛い)が挙げられ,症状がひどくなると,月経の時期を問わず出血する不正子宮出血の形をとり,出血が多くて貧血の状態に陥ることもよくみられる。その他,筋腫が大きくなって,まわりの組織,膀胱あるいは骨盤の中の神経や直腸を圧迫するための症状が認められる。…

【赤血球】より

…ヒトの赤血球の寿命は約120日で,老化した血球は脾臓や骨髄で崩壊し,新たに産生された赤血球が骨髄から血液へ供給されている。赤血球が減って血液による酸素運搬能力が低下した状態が貧血で,最も多い貧血の原因はヘモグロビンの材料になる鉄の不足によるものである。赤血球の病気にはこのほか,赤血球が増える多血症などがある。…

【造血薬】より

…貧血の治療に用いられる薬剤。貧血にも種類があり,おもなものに鉄欠乏性貧血,悪性貧血(巨赤芽球性貧血),再生不良性貧血,溶血性貧血などがある。…

※「貧血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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