化学辞典 第2版 「超原子価化合物」の解説
超原子価化合物
チョウゲンシカカゴウブツ
hypervalent compound
典型元素の化合物にみられるオクテット説を超える原子価をもつ化合物.遷移金属元素の化合物では,しばしば異常酸化数が現れるが,典型元素の化合物ではG.N. Lewis(ルイス)のオクテット説に従う化合物が多い.しかし,最近,オクテットを超える原子価をもつ典型元素化合物が目立つようになり,超原子価化合物という用語が流布している.たとえば,PCl5の三角両すい形型構造で,両端のClは中央の三つのClとは結合が異なることは昔から知られていたが,超原子価を表すのに使われているN-X-L表記法(Nは形式的価電子数,Xは中心原子,Lはσ結合している置換基数)を使うと,(10-P-5)と書くことができる.両端のClと中央のPとの結合は3中心4電子結合とみることができる.また,絶縁用気体のSF6は(12-S-6)と書くことができる.近年,話題になった希ガス化合物のXeF2とXeF4は,それぞれ(10-Xe-2)および(12-Xe-4)と書くことができる.現在,簡単な超原子価化合物は第3周期以上の典型元素について見いだされているが,炭素原子でも,五価以上になるような超原子価化合物をつくり出す努力が行われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報