辰巳婦言(読み)たつみふげん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「辰巳婦言」の意味・わかりやすい解説

辰巳婦言
たつみふげん

洒落本式亭三馬作。1冊。寛政 10 (1798) 年刊。角書に「石場妓談」とあるように,江戸の遊里深川古石場を舞台とする。おとまという遊女に,藤兵衛,喜之助,長五郎という3人の客を配し,おのおのの手管 (てくだ) の知恵比べを,時間設定も朝,昼,宵とずらして書き分けている。三馬の洒落本中の初作だが,山東京伝の影響が大きい。文化3 (1806) 年刊『船頭深話』,同4年刊『船頭部屋』はこの書の続編である。

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世界大百科事典(旧版)内の辰巳婦言の言及

【式亭三馬】より

…洒落,滑稽の黄表紙の正統を守った作風で,まじめさとストーリーの興味を第一とする寛政改革後の黄表紙の傾向に反発しているが,時流に抗しきれず,典型的な敵討物《雷太郎強悪物語(いかずちたろうごうあくものがたり)》(1806)を発表,合巻形式流行の端緒をつくった。また98年(寛政10)刊《辰巳婦言(たつみふげん)》を初作として洒落本数作を発表するが,1806年(文化3)に滑稽本の処女作《戯場粋言幕之外(げじようすいげんまくのそと)》《酩酊気質(なまえいかたぎ)》を発表,以後,資質にあった滑稽本の作者として活躍する。代表作《浮世風呂》《浮世床》のほか,江戸庶民の日常生活に取材して,人間の性癖・気質や心の表裏などを徹底した写生で会話を主として描き,皮肉な笑いを打ち出した《早替胸機関(はやがわりむねのからくり)》(1810),《四十八癖》(1812‐13),《人間万事虚誕計(にんげんばんじうそばつかり)》(1813),《古今百馬鹿》(1814)などがある。…

※「辰巳婦言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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