霊渠 (れいきょ)
Líng qú
中国,広西チワン(壮)族自治区興安県にある運河。零陵郡の零をとった零渠が原名。澪渠とも書す。興安運河,湘桂運河ともいう。湖南の湘江と広西の灕江(りこう)を上流で結び,全長34km。秦の始皇帝の広南進出にともない,前214年に開削された(開削の時期については前219年とする説もある)。以後,清代まで記録に残るだけで26回の修復がくり返され,漢民族の広南,交趾(コーチシナ)への進出に役立った。広さと水深には差があるが,狭部で7~10m,最広部は45m,その間水位調節のため半円形の石の斗門(陡門)が数多く設けられている。人民共和国成立後,霊渠は新たに修築が加えられ,この地域の灌漑面積は拡大された。
執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の霊渠の言及
【桂林】より
…湘江,桂江は地区内に源を発する。秦代に霊渠(湘桂運河)が開削されて両江が通じ,長いあいだ長江(揚子江)と珠江の両流域を結ぶ水運の要道となっていた。解放後,補修が行われ,この地区の灌漑面積は拡大された。…
【広西チワン族自治区】より
…珠江水系の本流である西江の上流の南盤江,北盤江は貴州省から自治区へ流入し,紅水河と呼ばれ,石竜で柳江を合わせ,以後黔江(けんこう)と呼ばれ,桂平で鬱江を合わせた後は潯江と呼ばれ,梧州で桂江が合流した後は西江と呼ばれる。これらの支流のうち最も長いのは鬱江だが,桂江はその上流で長江(揚子江)水系の湘江との間を霊渠と呼ばれる秦代に建設された運河で結ばれている。珠江水系以外の独立河川としては北海市付近で北部湾に流入する南流江がある。…
【大運河】より
…煬帝はただ遊楽と戦争のために運河を開いたようにいわれるが,当時すでに南方の開発は著しく,その豊富な物資を運河によって北方に輸送しなければ,国が維持できなくなっていたのである。 なお大運河の系統には入らないが,長江の支流である湖南省の湘江上流と,広西チワン(壮)族自治区の桂江上流との間には霊渠という運河があって,古く秦の始皇帝のときに開かれたといわれる。桂江を下れば珠江に入るのだから,長江と珠江とは相通ずるわけで,今の広州市と北京市とは隋代からすでに内陸水路で結ばれていたということができよう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」