日本大百科全書(ニッポニカ) 「非具象美術」の意味・わかりやすい解説
非具象美術
ひぐしょうびじゅつ
art non-figuratif フランス語
現実世界に存在する対象物の具象的イメージとはなんのかかわりももたない美術で、非対象美術ともいい、抽象美術とほぼ同義に用いられる。しかし、より狭義には、抽象美術のなかの純粋抽象美術のみをさすものとする場合もある。美術批評家ミシェル・スーフォールは「私は現実を想起させたり喚起したりするものをいささかも含まない美術を、すべて抽象美術とよぶ。その際、現実が芸術家の出発点であろうとなかろうと変わりはない」というが、現実から出発してそのイメージを抽象化する美術に対し、最初から抽象的原理に基づいてつくられた純粋抽象美術を、とくに非具象美術というわけである。これは、1917年の「デ・ステイル」の運動から始まるともいえるが、非具象という用語自体は、31年にパリで結成された「抽象=創造(アプストラクシオン・クレアシオン)」のグループが用い、彼らは32年から36年にかけて出版した年刊の機関誌を『抽象=創造、非具象美術』と名づけている。
[大森達次]