…海外の文学にもその例は少なくないが,日本では坪内逍遥が《小説神髄》(1885‐86)に〈小説の主脳は人情なり,世態風俗これに次ぐ〉と唱えたことから風俗小説のあり方が問題とされる。なかでも中村光夫の《風俗小説論》(1950)は,その系統を小栗風葉の《青春》(1905‐06)あたりから探って,日本の近代小説のゆがみを指摘したものとして知られる。風俗小説が表面的なリアリズムに走って,そこに小説本来の虚構性,ひいては作者の思想性が欠如していることに言及してもいるからである。…
※「風俗小説論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」