首飾(読み)しゅしょく

精選版 日本国語大辞典 「首飾」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐しょく【首飾】

〘名〙 頭を飾るかんざしの類。
読本・唐錦(1780)四「美しき首餝(シュショク)(〈注〉カミノカザリ)衣裳を求め候はんと思ひ」 〔曹植‐洛神賦〕

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改訂新版 世界大百科事典 「首飾」の意味・わかりやすい解説

首飾 (くびかざり)

首や胸元に飾る輪状のアクセサリー。ネックレスnecklaceともいう。宝石,貴金属をはじめとして,貝,木の実,動物の爪や牙や骨,色糸その他さまざまな材料が用いられる。頭飾,耳飾腕輪などの他の装身具に比べてもより多くみられ,特に未開社会では,ほかになんの飾りも身につけていなくても,首飾だけは日常的につけていることが多い。最も目だつ装身具であるところから,装飾を目的とするだけでなく,古来より未開,文明を問わず,社会的地位権力,富などをあらわす手段であった。首からかける形式の勲章がそのよい例である。遊牧民においては,男にお金が入ると自分の妻や娘に金銀の装飾品を買って身につけさせる例が多い。重い銀の首飾や腕輪は彼女たちの誇りであり,日常的にありったけのアクセサリーを身につけて暮らしていることも少なくない。インドシナ半島山岳部の非漢少数民族においても同様な傾向がみられる。ペニスケース腰蓑だけで生活している社会でも,一般に装飾品は豪華で,首飾や腕輪の類をしていないことは皆無に近い。アフリカの牧畜民の女は首飾をたくさん重ねてつけることを特に好み,窒息しそうなほど巻きつけていることが少なくない。また首が長いほど美人とする地域がアフリカやミャンマーにあり,同じサイズの真鍮首輪を高く重ねてつけた首長の女性もいる。未開社会の首飾の材料はユニークで,鳥の脚から有袋類の毛皮にいたるまで,なんでもぶらさげる材料になる。なかでも価値のある素材には,りっぱな豚の牙,子安貝,豹の爪などがあり,アマゾンの原住民社会では,豹の爪の首飾は祈禱師の身分とその力を象徴すると同時に,敵を威嚇する目的ももつ。未開社会ではなんらかの信仰に基づいて,護符として魔よけの意味で用いることも少なくない。

 日本では縄文時代に,牙,骨,角,貝,石などさまざまな材料を使った首飾があった。弥生時代から古墳時代には,有力者は美しい色石を使って,勾玉や細い管状の玉や小玉の首飾を用いるようになった。日本古代の首飾の形式は埴輪からうかがうことができる。中国には殷代に,玉の垂飾や子安貝をつないだりっぱなものがあった。西洋では,古代エジプトの,大きな涎掛(よだれかけ)状の胸当てのような幅広い首飾が名高い。アメジスト,ガーネット,黒曜石,コハク,豊富な彩色ガラス等を使った豪華なものである。メソポタミアではトルコ石が盛んに使われた。古代ペルシア時代では,何列もの垂飾を伴ったものがつけられ,ビザンティン帝国でも数段からなる並はずれて大きな首飾が,金の首当てのようなものの上に広がるように飾られた。ヨーロッパ中世の初期には,首の隠れる被り物や衣服のために,目だったものがないが,14世紀になると,胸の開いた服の流行とともに,また首や胸元を飾るアクセサリーが登場するようになった。その後東西文化の交流などと相まって,数々の宝石や貴金属を使った豪華な,技術的にも高度な首飾が用いられるようになり,男女共に盛んに使用した。ルネサンス以降は,特に金銀細工の太く長いネックレスが好まれた。18世紀にはダイヤモンドを多面体にみがく技術が発達し,小粒のダイヤをちりばめた首飾が流行の主流になった。

 首飾の種類には,鎖状のものや玉をたくさんつないで長く垂れ下げる形式のロングネックレス(この中には2mもの長いものを適当に巻きつけるロープネックレスも含まれる),首にぴったり巻くような形式のチョーカー,幅広の涎掛状のビブ,長めの鎖に飾りを下げるペンダント,それに写真や小物を入れるいれものを取り付けたロケットなどがある。
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百科事典マイペディア 「首飾」の意味・わかりやすい解説

首飾【くびかざり】

ネックレスとも。首飾の使用は古く,イタリアのグリマルディ洞窟で発見された旧石器時代人もつけていたとされる。古代では現在と同様に男女とも装身具として用い,日本では骨角や玉でつくったものが縄文(じょうもん)時代の遺跡から発見され,古墳時代にはますます盛んになった。西洋でもエジプト第4王朝のラーホテプとネフェルト夫妻の座像についているものや,メソポタミアのものが著名。

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