…そこで,その欠を補ったのが,中国から舶載された織物であった。中国織物の舶載は遣唐使の廃止後も引き続き行われ,宋代の唐錦や唐綾は貴族の間で珍重された。《枕草子》に〈めでたきもの唐錦〉とあるのは,愛好の一端を示すものであろう。…
…錦は2色以上の緯糸で文様を織り表したものをいう。平織地浮文錦,地と文が異なる斜文組織のものや,文が浮織となった唐錦(からにしき)といわれるもの,地と文が同じ斜文組織で,緯糸で地色と文様を表した大和(倭)錦と呼ばれるもの,などがある。綟り織(もじりおり)は搦み織(からみおり)ともいわれる透ける織物で,紗,縠(こめ),羅に分けられ,それぞれ無文と有文のものが用いられた。…
…剣菱の蔵元津国屋の養子で,1781年に30歳前後で没したとされている。著作に《翁草(おきなぐさ)》《両剣奇遇》《唐錦(からにしき)》《怪異談叢》《深山草(みやまぐさ)》《女水滸伝》があり,刊行は1778‐83年の間に集中している。いずれも当時流行の中国小説の構成や趣向を日本に移した小説で,《唐錦》の自序は,岡島冠山,岡白駒に始まった初期読本形成期の空気をよく伝えている。…
…女子教育特にしつけやたしなみを教えるために,《源氏物語》の登場人物を引いてさとすのである。阿仏尼の《乳母(めのと)の文》のほか《乳母の草子》《身のかたみ》《竹馬抄》等があり,近世に入っても大部な成瀬維佐子(大高坂(おおたかさか)維佐)の《唐錦》がある。旧大名家などに多く伝えられる,いわゆる嫁入本の《源氏物語》も多くはその趣旨のものであろう。…
※「唐錦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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