唐錦(読み)カラニシキ

デジタル大辞泉 「唐錦」の意味・読み・例文・類語

から‐にしき【唐錦】

[名]唐織りの錦。
[枕]布に関する意から、「た(裁)つ」「お(織)る」などにかかる。
「―たたまく惜しきものにぞありける」〈古今・雑上〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「唐錦」の意味・読み・例文・類語

から‐にしき【唐錦】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 唐織りの錦。舶来の錦。紅色のまじった美しい模様をしているので、紅葉などにたとえて用いられることが多い。⇔大和錦(やまとにしき)
    1. [初出の実例]「音羽山秋としなればからにしきかけたることも見ゆる紅葉か」(出典:是貞親王歌合(893))
    2. 「めでたきもの からにしき。飾り太刀」(出典:枕草子(10C終)八八)
  2. [ 2 ] 「裁(た)つ」「織(お)る」「縫(ぬ)う」など、布に縁のある語や、それらと同音の語にかかる。
    1. [初出の実例]「おもふどちまとゐせるよは唐錦たたまくをしき物にぞありける〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・八六四)
  3. [ 3 ] 江戸後期の読本。四巻四冊。伊丹椿園作・画。別題「今古小説唐錦」。安永九年(一七八〇)刊。九話の短編から成る奇談集。中国の「水滸伝」「警世通言」などを原話とし、時代を足利時代に移して翻案。椿園(一七五一頃‐八一)は、伊丹の人。通称津国屋善五郎(津国屋は銘酒剣菱醸造元)。別号歓笑処士。別著に「深山草」「両剣奇遇」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の唐錦の言及

【織物】より

…そこで,その欠を補ったのが,中国から舶載された織物であった。中国織物の舶載は遣唐使の廃止後も引き続き行われ,宋代の唐錦や唐綾は貴族の間で珍重された。《枕草子》に〈めでたきもの唐錦〉とあるのは,愛好の一端を示すものであろう。…

【有職織物】より

は2色以上の緯糸で文様を織り表したものをいう。平織地浮文錦,地と文が異なる斜文組織のものや,文が浮織となった唐錦(からにしき)といわれるもの,地と文が同じ斜文組織で,緯糸で地色と文様を表した大和(倭)錦と呼ばれるもの,などがある。綟り織(もじりおり)は搦み織(からみおり)ともいわれる透ける織物で,紗,縠(こめ),羅に分けられ,それぞれ無文と有文のものが用いられた。…

【伊丹椿園】より

…剣菱の蔵元津国屋の養子で,1781年に30歳前後で没したとされている。著作に《翁草(おきなぐさ)》《両剣奇遇》《唐錦(からにしき)》《怪異談叢》《深山草(みやまぐさ)》《女水滸伝》があり,刊行は1778‐83年の間に集中している。いずれも当時流行の中国小説の構成や趣向を日本に移した小説で,《唐錦》の自序は,岡島冠山,岡白駒に始まった初期読本形成期の空気をよく伝えている。…

【源氏物語】より

…女子教育特にしつけやたしなみを教えるために,《源氏物語》の登場人物を引いてさとすのである。阿仏尼の《乳母(めのと)の文》のほか《乳母の草子》《身のかたみ》《竹馬抄》等があり,近世に入っても大部な成瀬維佐子(大高坂(おおたかさか)維佐)の《唐錦》がある。旧大名家などに多く伝えられる,いわゆる嫁入本の《源氏物語》も多くはその趣旨のものであろう。…

※「唐錦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android