改訂新版 世界大百科事典 「馬淵氏」の意味・わかりやすい解説
馬淵氏 (まぶちうじ)
中世の武家。近江国蒲生郡馬淵(滋賀県近江八幡市)より起こる。佐々木氏一族。佐々木氏系図によれば定綱の後裔である広定が初めて馬淵氏を称した。代々近江の守護・戦国大名六角氏の有力家臣で,南北朝時代の初めから室町時代前半にかけては,守護六角氏の守護代として活躍した。とくに広定の曾孫にあたる義綱は,延文・貞治年間(1356-68)に活躍の跡が顕著であり,六角氏の領国政治を支えた重臣であったことがうかがえる。室町時代後半から戦国時代にかけては,六角氏中央の官僚機構からは遠ざけられたようで,具体的な政務には関与していない。その活動は軍事的な行動が中心であった。六角氏が織田信長に滅ぼされる直前の1567年(永禄10)に制定された《六角氏式目》には,20人の重臣たちの連署による起請文があるが,その中に山城入道宗綱と兵部少輔建綱の名前が見え,馬淵氏が最後まで六角氏と運命をともにしたことがうかがえる。
執筆者:細溝 典彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報