化学辞典 第2版 「高分子鎖の統計」の解説
高分子鎖の統計
コウブンシサノトウケイ
statistics of polymer chain
鎖状高分子鎖は,共有結合が長く直線的に連なった分子であり,溶液中や融体中では種々の形態をとり,気体や液体のように時間とともに変化するランダムな分子鎖形態をとっている.このような高分子鎖の平均的な状態や性質は,統計力学を用いると容易に理解できる.たとえば,高分子鎖末端の空間的な位置は確率分布に従い,分子鎖全体の空間的な広がりは,高分子鎖末端間の距離を求めることで評価できる.分子末端間の統計的平均量である平均二乗末端間距離〈 r 2〉は,高分子の構成単位(モノマー,またはセグメント)の数nとその長さbで記述できる.構成単位が自由に連結したモデルでは,
〈 r 2〉 = nb 2
と表される.ここで,n = 104(重合度)の高分子を考えると,分子鎖は1/100にコイル状に縮まっている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報