鳥部山物語(読み)とりべやまものがたり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥部山物語」の意味・わかりやすい解説

鳥部山物語
とりべやまものがたり

室町期の物語。中世流行の児(ちご)物語(男色物)の一つ。武蔵(むさし)国の某和尚(おしょう)の弟子民部卿(きょう)は師に従って上洛(じょうらく)のおり、中納言(ちゅうなごん)の子藤(とう)の弁(べん)を見そめる。従者たちの仲介で2人は深く語らう仲となったが、師の帰国で民部卿も関東に帰った。藤の弁は悲しみ、病となって、駆けつける民部卿を待つことなく他界した。民部卿も鳥部野の藤の弁の墓前で死のうとしたが、止められ出家した、という内容。『太平記』「一宮御息所(いちのみやみやすどころ)の事」に酷似し、『秋の夜(よ)の長物語』と並ぶ作。『群書類従』所収。

[秋谷 治]

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