塙保己一編の叢書。正編1270種530巻666冊,続編2103種1150巻1185冊からなる日本最大の叢書。正編は,1779年(安永8)に保己一がその編纂・出版のため,天満宮に心経百万巻読誦の誓願をしてから,1819年(文政2)に全冊の刊行を終えるまで,実に41年の歳月を費やした,畢世(ひつせい)の大業。その完成までには,幕府による援助をはじめ,蔵書を提供した幕府紅葉山文庫や伊勢神宮林崎文庫のほか,大名,公家,寺院など,各方面の協力を必要とした。また,屋代弘賢(ひろかた),横田茂語(しげつぐ),中山信名(のぶな)らの門下生は,校訂や版下の浄書などに献身的な助力を惜しまなかったし,ほかにも協力・援助者はすくなくない。続編の企画・編集も保己一の手になるが,1821年に業なかばにして没したため,子の忠宝(ただとみ)が遺志を継ぎ,目録の完成後,その校訂・浄書などに取り組み,出版計画を進めた。しかし忠宝の暗殺という不慮の事態も重なり,孫の忠韶(ただつぐ)の代である1911年(明治44)に至って,ようやく全巻の刊行をみた。本叢書は,古今の文献資料の散逸に備えるという趣旨から,とくに3巻以下の小冊に限定して,可能な限り多くの資料の収録をめざしたもの。分類は,菅原道真の《類聚国史》にならい,神祇,帝王,補任,系譜,伝,官職,律令,公事,装束,文筆,消息,和歌,連歌,物語,日記,紀行,管絃,蹴鞠,鷹,遊戯,飲食,合戦,武家,釈家,雑の計25部とする。底本の選定にあたって,良本の探求に意を用いつつ,他本による校訂にも厳正を期しているのは,編者の識見の高さによるものであり,のちに類従本として研究者のよるところとなった。また収載範囲は,中古・中世を中心に多種多様で,当時の稀覯(きこう)・貴重文献をほぼ網羅するの観を呈しており,国史・国文をはじめ,学界に寄与した恩恵は計り知れない。現在も板木が温故学会に保存されており活字本は正・続とも続群書類従完成会より出版されている。
執筆者:鈴木 淳
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江戸後期に編集された古文献の叢書(そうしょ)。塙保己一(はなわほきいち)編。1779年(安永8)に着手、門人中山信名(のぶな)、屋代弘賢(やしろひろかた)らの助けを得て、1819年(文政2)530巻を刊行した。収める文献は1270種に及ぶ。部門を神祇(じんぎ)、帝王、補任(ぶにん)、系譜、伝、官職、律令(りつりょう)、公事(くじ)、装束、文筆、消息、和歌、連歌(れんが)、物語、日記、紀行、管絃(かんげん)、蹴鞠(しゅうきく)、鷹(たか)、遊戯、飲食、合戦、武家、釈家(しゃっけ)、雑の25に分け、江戸初期までの貴重な文献を収載している。日本史、国語国文学における重要な資料集である。明治時代に活版印刷され、昭和年間に新版が出ている。保己一はまた続編をも計画したが、実現できず、子孫・門人に受け継がれ、曲折を経て1924年(大正13)より『続群書類従』として活版で刊行され完成した。『続群書類従』は1150巻、2103種の文献を収めている。こののち明治に、市島謙吉により『続々群書類従』、水谷弓彦、幸田成行(しげゆき)(露伴(ろはん))によって『新群書類従』が編集刊行されている。
[百瀬今朝雄]
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1276編からなる国書の一大叢書。塙保己一(はなわほきいち)編。文献資料の亡逸に備え,3巻以下の小冊に限っての網羅的な収録をめざしたもので,底本を精選して厳密な校訂を期した。分類は,菅原道真の「類聚国史」にならって,神祇・帝王・補任・系譜・伝・官職・律令・公事・装束・文筆・消息・和歌・連歌・物語・日記・紀行・管絃・蹴鞠・鷹・遊戯・飲食・合戦・武家・釈家・雑の25部からなる。1779年(安永8)保己一が平河天神社に祈誓してから,86年(天明6)の出版開始をへて,1819年(文政2)に全冊の刊行を完了するまで41年を費やした。幕府はじめ大名・公家・寺社・富商などの経済的援助や蔵書の提供,版下の筆耕など多くの援助があった。
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…彼はまた《類聚(るいじゆう)国史》を撰しているが,これは,そのときまでに出た六国史それぞれの中から事項別に原文を抜粋し編集したもので,カード(短札)方式による知識情報の処理の最初の例ともいえる。この〈類聚〉という考え方こそ,後の塙保己一(はなわほきいち)の《群書類従》,明治政府の《古事類苑》などに通じる類書的発想,ひいては今日の情報管理の原則たる知りたい知識情報そのものへの接近を可能ならしめる工夫である索引,抄録の思想につながるものである。それはまた史料編纂所の大事業《大日本史料》編纂にも受け継がれている。…
…なお,東洋には清の乾隆帝が収集した叢書を分類したいわゆる《四庫全書》の分類である〈四庫分類〉,経,史,子,集が知られている。さらに国書の収集に努力した塙保己一の《群書類従》は神祇以下列挙式に25部門に分類されている。日本図書コード分類【小野 泰博】。…
…山岡明阿に律令,萩原宗固に歌文,さらに宗固の勧めで賀茂真淵に六国史などを学んだが,真淵は入門して半年後に没した。1779年(安永8)に《群書類従》の編纂に着手,40年を費やして本事業を完成させ,ついで続編の計画を進めた。その間,水戸の彰考館に召され,《参考源平盛衰記》や《大日本史》の校訂を委嘱された。…
※「群書類従」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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