2020年問題(読み)にせんにじゅうねんもんだい

知恵蔵 「2020年問題」の解説

2020年問題

2020年に、世代ごとの人口分布のばらつきが表面化することで転換点を迎えることなどから起こる諸問題。仕事、不動産、教育など、問題が起こる分野は多岐にわたる。バブル期に「団塊ジュニア世代」を大量に採用した企業の社内ポストなどが不足する見通しであること、東京オリンピック・パラリンピック後に地価が下がり空き家が増えること、大学入試制度が大きく変わることなどが「2020年問題」の代表的な例とされている。
企業においては、社員は40歳代後半~50歳代前半に管理職へ昇進し、賃金水準ピークを迎える。1990年代後半には、47年~49年の第1次ベビーブームに生まれた「団塊世代」が一斉にこの時期を迎え、大企業は人件費を削減するために非正規雇用を拡大したり、新人の採用を控えたりしてきた。2020年には第2次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア世代」が50歳代にさしかかり、当該世代の中心が雇用者全体に占める割合が高くなる。このため、1990年代前半と同じような対策を取ったり、役職数を増やさない、賃金アップを控える、非正規雇用を増やすなどしたりして、人件費の圧縮を考えざるを得ない。しかし、正社員の構成が年代によって差が大きくなったり、社会的には非正規雇用を無制限に増やすことに批判があったりするなど、課題は多い。
不動産においては、2020年代以降は団塊の世代が70歳を過ぎ、高齢化率30%を超える極端な高齢化の時代となり、その後は、人口減少ペースに合わせて、全国的に空き家が増えていくと考えられる。東京オリンピック・パラリンピックまでは都内への流入率が高く、建築ラッシュは続くが、その後は不動産の資産価値は下がり、地価も下落する。この流れは地方都市でも同様である。人口減少に合わせて持ち家・賃貸とも空き家・空き室が増え、少子化が食い止められなければ、需要の伸びは期待できない。
教育の分野においても2020年は大きな改革が行われる年になっている。「大学入試センター試験」が20年1月の実施を最後に廃止され、21年1月以降は「新テスト」が行われる。国語と数学で「記述式」が導入され、英語では「読む」「聴く」に「話す」「書く」を加えた4技能を評価する。また、小学校から順次、新しい学習指導要領が施行される。その狙いは「基礎力」として言語・数量・情報の各スキルを身につけ、概念を理解して、問題を解き、応用・活用することである。従来の暗記・理解に主眼を置いた教育から、解決・実践・応用までを学びとする方針への改革である。入試の方法や学習指導要領を変えても、教育現場ですぐに対応できるかどうかは未知数であるため、2020年の制度改革に伴って起こる課題を教育界では「2020年問題」と呼んでいる。

(若林朋子 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

人事労務用語辞典 「2020年問題」の解説

2020年問題

企業における「2020年問題」とは、バブル期に大量採用したバブル世代社員や人口が相対的に多い団塊ジュニア世代社員の高齢化にともなうポスト不足、人件費負担増などの諸問題を指す言葉です。現在、多くの日本企業で人員構成上のボリュームゾーンを占めるのがバブル・団塊ジュニア世代。2020年代には40歳代後半~50歳代前半に達し、賃金水準のピークと同時に管理職への昇進年齢にもさしかかることから、業種を問わず、当該世代の社員をどう処遇するかが大きな経営課題として浮上してきました。
(2014/4/14掲載)

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

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