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人口 じんこう population

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7件 の用語解説(人口の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人口
じんこう
population

一国または一定の地域に居住する人々の総数。静態的統計 (→国勢調査 ) と動態的統計 (人口動態統計) の2通りの方法によって把握される。英語の populationあるいはドイツ語の Bevölkerungはともに重商主義時代にできた言葉であるが,現在の用法とは異なり,「人をふやす」「人を住わせる」という意味に用いられていた。

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デジタル大辞泉の解説

じん‐こう【人口】

人の数。特に、一国、または一定の地域内に住む人の総数。「人口が減る」「人口集中」「釣り人口
世人の口の端(は)。世間のうわさ。「人口に上る」

ひと‐ぐち【人口】

人のうわさ。世間の評判。じんこう。
「めでたき歌とて、世の―にのりて申すめるは」〈宇治拾遺・一〉

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百科事典マイペディアの解説

人口【じんこう】

ある地域に住む人間の数。英語のpopulationはもと〈人をふやす〉の意味をもつ。人口およびその変動は,社会発展の一つの重要な要因をなすとともに,社会発展の歴史的帰結でもある。
→関連項目安定人口・静止人口合計特殊出生率将来人口人口重心人口増加率人口ピラミッド成長の限界

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世界大百科事典 第2版の解説

じんこう【人口 population】

一定地域(ある地域,国家,あるいは世界等)に居住する人の数をいう。ある地域の人口集団は,出生,死亡,移動を通じて,その大きさや男女・年齢別構造,そしてまた人口の経済的・社会的構造も絶えず変化していく。出生,死亡,移動の人口現象は,経済,社会,文化,政治の変化の影響を強く受けるとともに,これらの人口現象の結果としての人口構造は社会の将来の発展の基礎条件として影響力をもってくる。しかし,人口変動と社会の発展,存続との間に現在みられるような深い相互関係は,歴史上かつてなかったといってよい。

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大辞林 第三版の解説

じんこう【人口】

人の数。一定の地域に住んでいる人の総計。
人のうわさ。人の口の端。
[句項目]

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人口
じんこう

序説

きわめて一般的に人口を定義すれば、人口とは人間の集団であるが、普通われわれが人口を論じるときには一国の人口、ある地域の人口というように、特定の行政区域内にいる人間の集団について考える。人口の大きさと構造は、その成員である個人が結婚、出産、死亡、あるいは移動といった動きをすることによって影響を受け、変化する。しかし他方、人口はそれ自体が経済社会に対する与件となって少なからぬ影響を及ぼす。そして、それがさらに人口の成員である個人の行動を左右するという関係にある。たとえば、人口規模が拡大し、国土や資源に対して過大になると、国民生活は苦しくなり、結婚や出産が抑制され、あるいは死亡が増加するであろう。要するに、人口とその成員である個人は相互に関係しあっている。この関係を明らかにすることは人口論の一つの重要な課題である。
 このような一般的な問題のほかに、最近は具体的な人口問題が日本の国内において、また世界全体について、人々の大きな関心事になっている。日本の国内においては、人口高齢化とこれに伴って生じる高齢化社会の諸問題がある。わが国では、第二次世界大戦前、過剰人口問題という大きな問題を抱えていたが、戦後の高度成長によってこれを解決することができた。しかし最近は、出生率、死亡率の低下によって生じた人口高齢化が国民生活に大きな影響を及ぼそうとしている。同時に国外では、開発途上国における人口爆発とこれによる開発の停滞があり、その問題の解決は20世紀末から21世紀にかけての人類最大の課題であるといわれている。しかも世界の人口問題は、先進国にとってもけっして無関心ではいられない重要な問題である。[岡崎陽一]

人口理論

厳密な意味での人口理論とは何かという問いに答えることは困難であるが、ここでは広い意味での人口に関する考察とその結果を含めて、これまでに出された人口理論を概観する。
 まず古代に地中海の東方地域に現れた人口理論は、宗教的立場にたって人口増加を歓迎した。独身は嫌われ、大家族が祝福された。息子を産み残さなかった者は、死後に祈りと供物と愛情を捧(ささ)げられることなく、寂しく哀れむべき魂となるであろうと信じられていた。この時代には政治的・軍事的立場からみても人口増加が歓迎された。王や支配者は人口の大きさは権力の象徴であると考え、また多くの兵士を得るためにも多数の人口が必要であった。そのために出生増強策がとられた。有名なハムラビ法典にも、人口の維持と増強を目的とした条文がみられる。また、子だくさんは男性の精力が旺盛(おうせい)な証拠と考えられ、大家族をもつことは自尊心と威信を満足させるものであった。なお農業社会では子供は生産力として役だったことも、人口増加が喜ばれた一つの理由であった。
 次に、ギリシアの哲学者の人口理論は都市国家の人口についての理論であるが、そこでは人口過剰がおこることが心配され、出生制限の必要が論じられた。プラトンは、理想国の家族数は5040が限度であると述べている。彼は人口の量を論じただけではなく、人口の質についても論じている。子供を産むことが許されたのは選ばれた優秀な市民だけであり、その子供は公共の施設で養育された。アリストテレスも人口数は適度に制限されるべきだと考えたが、その理由の一つとして、住民が多くなりすぎると支配者と市民の間の意志の疎通が妨げられることをあげている。
 ローマ人は都市同盟の盟主としてイタリアを統一し、さらに海外に領土を広めた。それゆえローマ人の人口理論は人口増強論であり、彼らは、規模の大きい、しかも増加を続ける人口が望ましいと考えた。ローマの支配者は概して結婚と出産を奨励した。
 中世を支配した人口理論は完全にキリスト教的なものであり、『旧約聖書』の「産めよ、殖えよ、地に満ちよ」という考えと、殺児・中絶の罪悪視を支柱とするものであった。それが人口増加を結果するものであったことはいうまでもない。このように、古代から中世に至るまで、ギリシアの適度人口論を除いて、人口増強論が支配的であった。
 この傾向は16世紀にヨーロッパに国民国家が成立すると一段と強められる。その理論は重商主義であったが、それはまた、大規模な、増加する人口は国力の源泉であると考えていた。重商主義は約2世紀にわたりヨーロッパを支配したが、18世紀末になると国家の利益よりも個人の福祉を重視する思想が台頭してきた。マルサスが有名な『人口論』(1798)を書くきっかけになったゴドウィンおよびコンドルセの思想もその一つである。ゴドウィンは、人間社会の不幸はもっぱら社会制度の欠陥に原因があると論じた。たとえば、国民所得の配分を平等にすることができれば貧困は解消すると考えた。
 マルサスの『人口論』はこの考え方に対する反論として書かれたもので、人々の生活を改善しようとする努力を妨げるものは社会制度のなかに求められるべきではなく、人口と生活資料のバランスを崩す一種の自然法則のなかに求められるべきであると主張した。ここに自然法則といわれているものは、人口は制限されることがなければ、与えられた生活資料が許容する大きさまで増加する傾向がある、あるいはそれ以上に増加する傾向がある、という法則である。マルサスはそれを例示するものとしてアメリカでの経験を引用している。すなわち、人口は25年間に2倍ずつ幾何級数的に増加するが、食糧は25年間に算術級数的にしか増加しないというのである。マルサスの『人口論』は自然法則的な単純明快な論旨により、しかも戦争、悪疫、飢餓による人口制限を必然的とみる悲観的な結論になっているため、大きな反響をよび、多くの批判を受けた。ただマルサスは、『人口論』の版を重ねるにつれて道徳的抑制の役割を認め、初版よりは柔らかな論調に改めていった。マルサスが認めた道徳的抑制はもっぱら晩婚による出生抑制であり、産児制限による出生抑制を念頭に置いていなかった。しかしマルサス以後に実際に人口抑制に著しい効果をあげたのは産児制限であった。産児制限論者は、通常、新マルサス主義者といわれている。
 マルサス批判は諸方面から出されたが、その一つにマルクスの批判がある。マルクスは、労働者の貧困の原因は資本家による搾取、資本の有機的構成の高度化による相対的過剰人口にあるとし、その問題の解決は人口の抑制にではなく、社会主義社会の実現に求められなければならないと主張した。貧困の問題を中心とする人口問題の解決策についてのマルサスとマルクスの見解の相違は、現在でも、開発途上国の人口問題をめぐる議論のなかにみいだすことができる。マルサス的な論者は人口抑制の重要性を強調するが、これに対して経済開発の重要性を主張する論者が対立している。[岡崎陽一]

人口の構造

人口は一種の有機体であるから、絶えず変動している。そのような人口の実態をとらえるのに二つの方法がある。一つは、スナップ写真のように、ある一瞬間の人口の姿をとらえる方法であり、もう一つは、ある期間における人口の変化をとらえ、また変化をもたらす諸要因(出生、死亡、移動など)を調べる方法である。
 前者すなわち人口の静態を調べるためのもっとも大掛りな調査は国勢調査である。日本では1920年(大正9)に第1回の国勢調査が行われ、戦争中を除いて、5年に1回の間隔で実施されている。日本の国勢調査は、毎回10月1日午前0時現在の人口を調べることになっている。国勢調査は悉皆(しっかい)調査であり、各人の性、年齢、配偶関係、就業状態などの属性を調査する。したがって、それを集計すると、全国人口の大きさ、その属性別にみた構造がわかり、さらに都道府県別、また市区町村別の人口の大きさ、構造をも知ることができる。
 人口の構造のなかでとくに重要なものは男女年齢別構造であり、これを人口学的基本構造という。それを一括して表すのに人口ピラミッドが描かれることがある。日本の人口ピラミッドは、第二次世界大戦前はきれいな富士山型であったが、戦後はしだいに釣鐘型に変わってきている。これはヨーロッパの先進国と同様の形であり、人口高齢化の現象を示す。
 年齢別構造は、年少人口(15歳未満)、生産年齢人口(15~64歳)、老年人口(65歳以上)の3区分で表すこともある。人口の産業別構造も重要である。産業を第一次、第二次、第三次産業に分けると、戦前(1930)は50%、20%、30%という割合であったが、最近(2000)は5%、29.5%、64.3%というように、第一次産業の割合が著しく減っている。[岡崎陽一]

人口の変動

人口を変動させる直接の要因として、出生、死亡、移動の三つがある。出生は人口を増加させる要因であり、死亡はそれを減少させる要因である。移動は、地域によって流入超過の場合と流出超過の場合がある。これら三つは広義の人口動態要因であるが、わが国で人口動態統計といわれているのは、出生、死亡、婚姻、離婚、死産の五つに関する統計であり、これらは人口動態登録の届け出をもとにして作成されている。
 出生と死亡の変化については、「人口転換」demographic transitionといわれている経験法則がある。それは、経済社会の近代的発展につれて、まず死亡率が低下を始める、それより数十年遅れて出生率が低下し、やがて出生率、死亡率がともに低い水準に落ち着いていくという経過のことである。わが国の第二次世界大戦前から現在までの経過もほぼ先進諸国の場合と同様で、人口転換の型にはまった動きを示している。
 死亡率の低下が先行するのは、各国とも近代化の目標として衛生行政に力を入れることや、生活水準が上昇して健康状態が改善されることが原因である。これに対して、出生率は伝統的な社会慣行や国によっては宗教などの影響で低下が遅れるのが普通である。ただ、近代化とともに産業構造が変化し、都市化が進むと、しだいに人々の意識が変わり、出生率も低下を始める。出生率が従来どおりの高さにとどまっている間に死亡率が低下する段階では、人口増加率はしだいに上昇する。どの国でも近代化のなかで相当な人口の増加をみたのはそのためである。しかし、出生率、死亡率がともに低水準になった段階では、どの先進諸国も人口増加はきわめて低く、年率1%以下になる。
 他方、開発途上国は現在人口増加の時期にあたっている。それだけではなく、これらの国々ではもともと出生率が高かったうえに、第二次世界大戦後、DDTなどの薬剤が外国から持ち込まれ死亡率が急低下したので、人口増加はとくに激しくなった。年平均増加率が2.5%から3%になり、このような爆発的人口増加が経済社会開発の大きい障害になっている。[岡崎陽一]

人口の移動

人口の移動は地域移動と社会移動の二つに分けることができる。人口問題としてはどちらも重要であり、また相互に関係しているが、データの関係上、地域移動のほうがより多く取り扱われている。
 地域移動はさらに国内移動と国際移動に分けることができる。国内移動もいろいろな種類に分けることができる。たとえば、わが国の例では、府県間移動(長距離移動)と府県内の市町村間移動(短距離移動)である。そのほか、24時間周期でおこる通勤・通学のための振り子移動といわれるものもある。どの国でもみられたもっとも典型的な移動は、農村から都市への移動である。この種の移動は近代以前にもみられたが、近代における工業化とともに一段と激しくなった。これは、工業地域における労働需要の増加によるいわゆる「吸引型」の移動である。わが国でも昭和30年代以降の高度成長期に多数の人口が都市に移動した。しかし、最近はどの国でも移動が多様化している。農村から都市への移動のほかに、都市間移動や都市から農村への移動、また農村間移動といったものも増えてきている。
 移動の原因についても、かつては就業機会を求めての移動とか、賃金または所得の高い地域を希望しての移動が多かったが、生活の向上と多様化のなかで、別の理由による移動が増えている。高齢化社会においては、親世代と子世代の同居のための移動が増加するであろう。
 国際人口移動は、かつてヨーロッパからアメリカへの移動が大きな流れであったが、第一次世界大戦まででその歴史は終わった。第二次世界大戦後、物的にも人的にも国際交流は増大したが、大規模な国際人口移動はおこらなかった。ただ、戦後の経済的繁栄のなかでヨーロッパ先進諸国が労働力不足となり、南ヨーロッパ地域から外国人労働者を受け入れたことがある。また中近東石油産出国で経済的ブームがおこり、アジア地域を含む各地から多数の外国人労働者が流入した。また、その性質上正確な数字はつかめないが、かなりの数の不法移民がアメリカなどには存在するといわれている。[岡崎陽一]

人口の現状と将来

現在(2006年)世界の人口は約65億人と推定されている(国連人口基金推計)。1950年には約25億人であったから、第二次世界大戦後50年余りの間に2.6倍ほどに増大したことになる。国際連合の推計によると2001年の世界の人口は61億3000万人で、このなかで増加が著しかったのは開発途上国で、1950年に17億人であったのが2001年には49億人になり、2.9倍の増加である。これに対して先進国の人口は、8億人であったのが12億人に、5割増加しただけであった。
 世界の人口が60億を超えたのは1999年といわれる。国際連合の将来推計人口によると、2025年には79億人、2050年には91億人になる。このうち途上国の人口は2025年には67億人、2050年には78億人とされているが、先進国の人口は2025年も2050年もおおよそ12億人で、現在とも大差がない。2004年現在の世界人口を大陸別にみると、アジア38.6億人(60.4%)、アフリカ8.9億人(13.9%)、ヨーロッパ7.3億人(11.4%)、ラテンアメリカ5.5億人(8.7%)、北アメリカ3.3億人(5.1%)、オセアニア0.3億人(0.5%)である。国別では中国の12.96億人(20.3%)がもっとも多く、インドの10.86億人(17.0%)が続く。
 国際連合によると日本の人口は現在(2004年推計)1億2767万人で、世界第9位である。第二次世界大戦後、出生率と死亡率が大幅に低下し、昭和30年代以降およそ20年間「少産少死」の人口動態が定着した。しかし、その後出生率の低下が続き、その結果、日本の人口は、2004年(平成16)の1億2777万6000人(人口動態統計)から05年には1億2775万7000人(国勢調査)と減少に転じた。国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口』(平成14年1月推計)によると、人口減少は続き、2025年に1億2114万人、2050年にはほぼ1億人になると予測されている。[岡崎陽一]

人口問題

人口問題は時代とともに、また各国が置かれた状況とともに変化する。現代は、世界的視野にたってみた場合にも、また日本について考えた場合にも、大きい、そして深刻な人口問題に当面しているということができる。人口問題の発生は、当然、人口政策の策定と実施を要請する。しかし、人口政策も経済社会が高度に発達した現代では、高度な施策を必要とする場合が多く、その効果をあげるのは容易ではない。ここではまず世界の人口問題について述べ、ついで日本の人口問題について説明する。[岡崎陽一]
世界の人口問題
すでに述べたように、世界の人口は現在約60億人を超えており、増加率の低下が予想されるものの、人口は今後さらに増加する見込みである。1995~2000年の増加率は全体で1.36%、先進国で0.30%、開発途上国で1.63%であり、世界人口の増加のおもな原因は途上国の人口増加にあることは明らかである。
 開発途上国の人口増加は、経済社会開発の大きな障害となっているという点で問題である。第二次世界大戦後、旧植民地の多くが独立し、経済社会開発に大きな努力を傾けているが、いろいろな障害があって、なかなか所期の成果をあげることができない。その障害の一つは人口増加である。現在先進国といわれている国も、近代以前には出生率、死亡率が高く、したがって人口増加率が低かった。経済社会の発展とともに「人口転換」が始まり、人口増加率が徐々に高まった。このように経済社会開発と人口増加が車の両輪のように働く場合には、人口増加は、障害どころか、むしろ開発を促進する要因となる。しかし、現在の途上国の場合はそれとは事情がまったく異なっている。
 もともと出生率が高かったうえに、死亡率が急低下したために、開発計画の初期段階において年率2%から3%という激しい人口増加がおこった。増加する人口を養うために、せっかくの開発の成果が食いつぶされ、生産力を高めるための投資不足に陥り、また貴重な外貨を生活のために費やさざるをえなくなった。それゆえ、開発途上国の重要な問題として人口増加を抑制するという問題があり、そのためにどのような方策が有効かという問題が登場してきたのである。
 先進国において出生率が低下したのは、開発が進むとともに国民の意識のなかに自然に子供数を減らそうという気持ちが強まってきたためであったが、途上国の場合は、そのような意識が十分に生まれる前に、政策的に出生を抑制しなければならないということであり、前例のないむずかしい問題であるといえる。
 インド政府は、どの国よりも早く1952年に国家的な家族計画運動を始め、人口についての教育、宣伝、家族計画を指導する診療所の開設、避妊器具の配布などに努めたが、いろいろな理由で容易に成果をあげることはできなかった。しだいにその他の国でも家族計画運動が実施されるようになり、現在では途上国の大部分の国が、方法はさまざまであるが、人口問題の解決のために努力している。なかでも世界の注目を浴びているのは、中国の「一人っ子政策」であり、従来、子供は2人までというのが普通であったのに対して、夫婦の子供数を1人にするよう強力な施策がとられており、その結果について多くの国が注目している。この政策はかなり成功しており、中国の人口は現在12億人に達しているが、しだいに増加率は低下しており、将来15億人ほどで食い止められる見込みである。
 国際連合などの国際機関は世界の人口問題に多大の関心を寄せ、資金面、技術協力面で幅広い援助活動をしている。1974年にはブカレストで、1984年にはメキシコ・シティで、1994年にはカイロで国連主催の世界的な人口会議が開催され、世界各国の代表者が一堂に会して、人口問題について討議し、その解決策について話し合った。[岡崎陽一]
先進国の人口問題
先進国は、途上国とは性格の違った人口問題を抱えている。その主要なものは出生率低下の問題である。欧米先進諸国は、1930年代に著しく低い出生率を経験した。当時の出生率水準は、死亡率が高かったこともあって、親世代と同数の子世代の人口を産み残すことができないほどであった。その原因についてはいろいろ論じられているが、ともかく西欧の没落と関連して論じられるほどの大問題であった。しかし、1940年代に入ると、戦時下の人口政策の影響もあって出生率はしだいに上昇した。そして第二次世界大戦後は一時的なベビーブームだけではなく、1960年代中ごろまで長期間にわたり、戦前には予想されなかったほどの高い出生率がみられるようになった。ところが、その後ふたたび欧米先進諸国の出生率は一斉に低下を始め、1970年代に入るとますます低水準になり、1930年代と同様に人口の置換水準を下回るようになった。その結果、いくつかの国では人口増加が止まり、あるいは人口減少がみられるほどになった。
 今回の出生率低下についてもまた、その原因については諸説があるが、多くの政府がその対策として力を入れているのは、出産手当、児童手当、住宅手当など家計収支のうえで子供を養育する費用の負担を軽減するための施策と、働く母親が増えていることに関連して、産前・産後の休暇、保育施設などを充実して就労と育児の競合を柔らげる施策がおもなものである。経口避妊薬(ピル)、IUD(子宮内避妊器具)、人工妊娠中絶などは最近先進国の出生率を下げている一つの原因であるが、多くの国で、これらの出生抑制手段は、女性の人権、母体の保護といった立場からむしろ普及を推進する方向にある。
 日本も先進国の一員であるが、日本の人口問題は第二次世界大戦前と戦後で大きな変化があった。戦前はいわゆる過剰人口問題が中心であったが、戦後経済が順調に発展したなかでその問題は解決され、むしろ高度成長期には労働力不足、過密・過疎、環境問題といった諸問題が新しく登場してきた。これらの問題は、高度に発達した経済社会に特有の人口問題であり、単に人口の側における対策だけではなく、それをも含めた幅広い対策がとられている。労働力不足に対しては合理化による生産性の向上、過密・過疎問題に対しては全国総合開発計画、環境問題に対しては公害の規制などがそれである。しかし、1970年代中ごろからわが国では人口高齢化の問題が大きく取り上げられるようになった。戦前から1955年(昭和30)ごろまでわが国の人口の年齢構成はほとんど変化していなかったが、1970年国勢調査において、総人口のなかで65歳以上の高齢者の割合が7.1%となったことが明らかにされた。そのころから高齢者の増加の問題が徐々に人々の関心の的になり始めた。さらに1970年代中ごろから出生率低下が続き、人口再生産水準を下回る状態になり、いわゆる少子化の問題が深刻になった。そのため人口高齢化も一段と厳しくなることが予測されている。
 人口高齢化とそれに伴って生じる高齢化社会の諸問題がにわかに大きく取り上げられるようになった理由は、いうまでもなく、人口高齢化が本格的に進み始めたことにあるが、それと同時に、日本経済の成長に陰りが生じたことがもう一つの理由である。それ以前は、高度成長の成果を踏まえて、わが国を福祉国家として安定させるための諸施策が準備されつつあった。国民皆保険・皆年金の制度の発足はその一つであった。
 しかし、増大する高齢者を福祉国家が社会的に扶養していくためには、経済的基盤の確保が必要である。低成長への転換とともに経済的基盤についての不安が生まれたことは、高齢者問題を見直すことを要求した大きい原因であった。事情は日本以外の先進諸国にとっても同様である。現在、先進諸国が当面している人口問題は単なる高齢化問題ではなく、極端な少子化をベースにした高齢化の問題である点に特徴がある。増加する高齢者の生活を保障するための諸施策だけではなく、少子化の進行を食い止めるための施策を進めるというもう一つの大きい課題に当面している。したがって福祉国家の諸施策のなかで子育て支援のための家族政策family policyを強化することが必要である。[岡崎陽一]
『南亮三郎他編『人口大事典』(1957・平凡社) ▽阿藤誠編『先進諸国の人口問題――少子化と家族政策』(1996・東京大学出版会) ▽岡崎陽一著『現代人口政策論』(1997・古今書院) ▽阿藤誠著『現代人口学――少子高齢社会の基礎知識』(2000・日本評論社) ▽速水融編『歴史人口学と家族史』(2003・藤原書店) ▽松谷明彦著『「人口減少経済」の新しい公式――「縮む世界」の発想とシステム』(2004・日本経済新聞社) ▽河野稠果・大淵寛編『人口と文明のゆくえ』(2004・原書房) ▽大淵寛・高橋重郷編著『少子化の人口学』(2004・原書房) ▽国際連合経済社会情報・政策分析局編、阿藤誠監訳『国際連合・世界人口予測 1950→2050』2冊・2002年改訂版(2005・原書房) ▽大淵寛・兼清弘之編著『少子化の社会経済学』(2005・原書房) ▽大淵寛・阿藤誠編著『少子化の政策学』 ▽吉田良生・河野稠果編著『国際人口移動の新時代』(2006・原書房) ▽大淵寛・森岡仁編著『人口減少時代の日本経済』(2006・原書房) ▽John A. Ross ed. International Encyclopedia of Population(1982, The Free Press, New York)』

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世界大百科事典内の人口の言及

【カオス】より

…数学的現象の名称。人口や生物の個体数の時間的変化を記述する数学のモデルの歴史を考えてみよう。T.R.マルサスの法則(1780)はu(t)を時刻tでの個体数として,微分方程式du/dtAuで記し,この解としてutの指数関数exp(At)となる。…

【人口法則】より

…人口をめぐる諸現象,ことに人口の過不足の動態とその原因や作用をめぐって主張される法則をいう。人口法則をどのように理解するかは,経済社会全体の仕組みや運動をどのように理解するかに応じて異なりうるし,逆にまた経済社会全体についての理解を左右する意義をもつことが少なくない。…

※「人口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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