管理職とは,広義には,企業やその他の組織体において,組織構造上のフォーマルな長として,もっぱら管理という職能を遂行する人々(管理者)の職能上の職位の総称である。〈管理〉を共通の目標を実現するために協働する集団の活動と解釈すれば,管理職は時代や社会体制にかかわりなく,普遍的に存在するといえる。単純な組織状況では,管理は社会に流布している慣習的,伝統的な行動様式にもとづいて無意識に行われてきた。しかし,組織体が成長し複雑化するにつれ,またそれを取りまくさまざまな環境的諸条件が複雑に絡みあうにつれ,組織体そのものに水平的および垂直的な機能分化の要請が強く現れてくる。管理職の出現は,組織体の垂直的な機能分化の必然的な結果である。垂直的機能分化のもっとも単純な形態は,実行職能と管理職能の分化に見られる。つまり,管理者は自ら業務を実行するよりも,むしろ他の人々をして業務を遂行させることがその主要な職能となるわけである。
組織規模の拡大は,また管理者層にも作用し,意思決定の垂直的専門化をもたらす。組織構造を意思決定の垂直的専門化の観点から見れば,トップ・マネジメント=最高管理者(経営者)層,ミドル・マネジメント=中間管理者層,ロワー・マネジメント=下級管理者(監督者)層に分類される。狭義の管理職とは,通常,中間管理者層のことであり,ときには最高管理者層を含むことはあるが,下級管理者層を含むことはない。経営者を含め管理職の役割は,共通の目標を実現するために協働的行動を確保することにあり,管理職は下位者に適切な意思決定の枠組みを提供しなければならない。このためには,管理職は高度な専門的知識と幅広い教養とをもつことが必要である。それゆえまた,組織においてもっとも困難な立場にあるのが中間管理者としての管理職である。たとえば,OA(オフィス・オートメーション)などの情報技術の発展の影響をもっとも強く受けるのがこの管理職のレベルであり,またマトリックス組織(〈経営組織〉の項参照)などの新しい組織編成,あるいはまた〈減量経営〉などの波をいちばんかぶるのもこのレベルである。それにもかかわらず,上から与えられた意思決定の枠組み内で,中間管理者はオーガナイザーとしての役割と下位者へのモティベーターとしての役割を果たさねばならない。この二つの役割を両立させる専門的能力がいわゆる管理職に求められ,それが今後一層重要なものとなろう。
執筆者:岡本 秀昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…このような実態は,基本的には第2次大戦後の1950年代の技術革新期まで維持された。
【ホワイトカラー管理職の実態】
ホワイトカラー,広い意味での管理職・管理補助職の技能養成は,ブルーカラーの場合以上に個人的・経験主義的要素が支配的であった。第2次大戦前には大企業でも大卒・高専卒は絶対少数であり,彼らは経営幹部候補生としてブルーカラーの養成工以上に終身雇用の対象となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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