LDH(LD)(読み)LDH

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「LDH(LD)」の解説

LDH(LD)

基準値

120~220U/ℓ(JSCC勧告法)

LDH(LD)とは

 細胞内で糖がエネルギーに変わるときに働く酵素のひとつ(乳酸脱水素酵素)。全身のあらゆる細胞に存在している。


LDHが一時的に4~5倍に上昇 →ウイルス急性肝炎

LDHが2倍以下 →アルコール性肝炎、脂肪肝慢性肝炎肝硬変

・LDHがASTALTより上昇 →肝臓がん(とくに転移性)

LDHは、AST・ALTともに肝機能検査の3本柱です。この3つが高値なら肝臓病が強く疑われます。

肝臓が障害を受けると高値に

 LDHも、前述したAST(→参照)、ALT(→参照)と同様に、肝機能を調べる検査のひとつです。

 LDHも、肝細胞の中に含まれているため、肝細胞が障害(破壊)を受けると細胞の外に出てきて、血液中のLDHの値が上昇します。

 肝障害でLDHが最も高値になるのは、ウイルスが原因でおこる急性肝炎で、急性期には基準値の4~5倍に上昇します。アルコール性肝炎、脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変では、2倍以内の上昇が一般的です。

 また、肝臓がんでも上昇しますが、とくに転移性肝臓がんでは、AST、ALTの上昇に比べ、LDHがより上昇するのが特徴です。

急性心筋梗塞でも上昇

 LDHは、肝細胞のほか心筋心臓の筋肉)、骨格筋血球など全身のあらゆる細胞に含まれており、それぞれの細胞の障害(破壊)で値が上昇します。

 急性心筋梗塞こうそくでは、LDHは発症6~10時間で上昇し始め、24~60時間で極値、正常の4~5倍の値になります。この病気は、発症1週間が重要な時期のため、症状が安定するまでLDHをはじめとする血液検査を繰り返し行います。

 また、LDHだけが異常に高値の場合には、悪性腫瘍の存在が疑われます。がん細胞は多くのエネルギーを必要としますので、LDHが多量に出てくるためです。

検査前日・当日の激しい運動は控える

 血清を用いて、自動分析器で測定します。AST、ALTと同様にLDHは赤血球の中にも含まれているために、採血、分離するとき赤血球が壊れる(溶血)と、LDHは外に出て軽度上昇します。

 LDHは、骨格筋細胞にも含まれているため、激しい運動後では翌日くらいまでは軽度上昇することがあるので、検査前日・当日の運動は控えます。

 検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

高値のときはアイソザイムを測定

 肝臓の病気では、LDHに加えてAST、ALTも上昇しますが、心臓や筋肉の病気では、LDHとASTが上昇し、ALTはごく軽度の上昇のみです。

 LDHは、急性肝炎や急性心筋梗塞では一時的な数倍の上昇であり、筋肉や血液の病気では2~3倍の持続した上昇を示します。

 LDHが高値のときは、くわえてLDHのアイソザイムを測定し、原因となる病気の診断に役立てます。

 アイソザイムとは、同じ働きをするが分子構造が異なる酵素群のことで、LDHの場合は、さらに分析するとLDH1~LDH5の5つに分けられます。1は心筋や腎臓、赤血球に、2は心筋や肺、3は肺、4と5は肝臓に多く含まれているため、どのアイソザイムが多いかで、異常のある臓器などを探す手がかりになります。

疑われるおもな病気などは

◆高値→肝疾患:急性肝炎、肝臓がん、転移性肝臓がん、肝硬変、慢性肝炎など

    心疾患:急性心筋梗塞、心不全など

    筋疾患:多発性筋炎(皮膚筋炎)、筋ジストロフィー症など

    その他:肺梗塞、白血病、悪性貧血、溶血、悪性腫瘍など

医師が使う一般用語
「エルディーエッチ」=lactate dehydrogenase(乳酸脱水素酵素)の略 LDHから。または「にゅうさんだっすいそこうそ」

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android