世界大百科事典(旧版)内のkinēsisの言及
【西洋哲学】より
…両者の違いは,自然的存在者にあっては可能態から現実態へ向かうその運動の原理が〈自然(フュシス)〉としてその運動体(樫の木)そのものに内蔵されているのに対して,制作物にあってはそれが職人の〈技術(テクネ)〉として運動体(机)の外にあるという点だけである。しかも,この〈可能態‐現実態〉の関係は相対的・可動的であり,たとえば〈森の中の樹→仕事場の材木→机→読書〉といった系列のなかで,それぞれ前者が後者の可能態,後者が前者の現実態であり,可能態から現実態への移行は〈運動(キネシスkinēsis)〉と考えられるのである。したがってプラトンのイデア論にあっては無意味な変化しか認められなかったこの現実の世界が,アリストテレスのもとでは不断の合目的的な運動のうちにあると見られることになる。…
※「kinēsis」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」