化学辞典 第2版 「RPD法」の解説
RPD法
アールピーディーホウ
RPD method(retarding potential difference method)
追返し電位差法,Fox法ともいう.電子衝撃法で電子エネルギー分解能を上げるため,実際上単一エネルギーとみなされる電子を得る方法である.R.F. Foxが1955年に発表したのでFox法ともいう.RPD法に使用する電子銃およびイオン源と各電極間の電位分布の一例を図(a)に示す.フィラメントFから放射した電子のうち,電極 P2,P4 でシールドされた追返し電極 P3 の電位 Vr よりエネルギーの低い部分は追い返される.電極 P4 と PCH の間で必要な電子エネルギーにまで加速してイオン化箱に入射させる.次に,電極 P3 に Vr + Δ Vrだけ電位をかけ,さきに測定した現象とこの状態で測定した現象との差をとると,実質的には図(b)の斜線で示した部分の狭い電子エネルギー幅の電子で起こった現象を測定したことになる.一般には,電極 P1 の電位を負にし,正のパルス電位を与え,またイオン引き出し,あるいは押し出しをパルス化して,電子がイオン化箱を通過している間はイオン化箱に静電場がないようにすることが多い.また,P3 にΔ Vrに相当する電圧を低周波のサイン波またはく形波でパルス状に荷電し,このパルスと同期させて,ロックイン増幅して Vr + Δ Vr と Vr のそれぞれで起こった現象の差だけを直接測定することも行われている.RPD法はイオン化ばかりでなく,励起の研究(たとえば,電子捕そく法など)にも広く使用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報