電位(読み)でんい(英語表記)electric potential

精選版 日本国語大辞典 「電位」の意味・読み・例文・類語

でん‐い ‥ヰ【電位】

〘名〙 電場内の一点にある基準点から単位電荷を運ぶのに要する仕事。電荷のもつ位置のエネルギーのこと。〔現代大辞典(1922)〕

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デジタル大辞泉 「電位」の意味・読み・例文・類語

でん‐い〔‐ヰ〕【電位】

二点間に一定の電気量を運ぶのに必要なエネルギー。

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改訂新版 世界大百科事典 「電位」の意味・わかりやすい解説

電位 (でんい)
electric potential

静電場(時間的に一定の電場)の中におかれた電荷は,各場所で定まる位置のエネルギーをもつ。これは重力場の中におかれた質点に対し,場所の関数として位置のエネルギーが定まるのと同じである。単位電荷(1Cの電荷)が電場の中の各点でもつ位置のエネルギーを,その点の電位という。詳しくいえば,単位電荷が電場から力を受けて点Pから点Qまで移動するとき,電場が単位電荷にする仕事を2点PQ間の電位差と呼ぶ。そして,任意の点と無限遠点(または大地)の電位差をその点の電位とする。上記の仕事が1Jのとき,対応する電位差を1Vと呼ぶ。空間内で電位の等しい点を結んでできる面を等電位面といい,等電位面と電気力線の関係は,地図の等高線と下り勾配の関係に対応する。すなわち電気力線は等電位面と直交し,電気力線に沿って進めば電位は減少する。厳密にいえば,電位が存在するのは静電場に対してだけである。交流回路などのように時間変化があるときには,電場は一般に電荷を源とするクーロン電場と,磁場の時間変化を源とする誘導電場の和である。後者の電気力線は渦状の閉曲線であるから,電気力線に沿って減少する電位を考えることはできず,そのため誘導電場が存在するところでは電位は定義できない。しかし,ふつうの交流回路では,誘導電場が存在するのはコイルの付近などに限られていて,誘導電場とクーロン電場を区別して扱えるので,クーロン電場に対する各瞬間ごとの電位は定義できる。交流回路で電圧と呼ばれるのは,この電位の電位差である。
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百科事典マイペディア 「電位」の意味・わかりやすい解説

電位【でんい】

時間的に変化しない電場(静電場や定常電流の場)内で,単位正電荷(1クーロンの電荷)を基準点(ふつう無限遠点または大地)からその位置までに運ぶのに必要な仕事をその点の電位という。電位の等しい点をつないでできる面を等電位面といい,電気力線は等電位面に直角に交わる。電場内のある点である方向に向かう電場の強さは,その方向の電位の勾配(こうばい)に等しく,電位の高いほうから低いほうへ向かう。電荷が動かないときは,導体の各点の電位はすべて同じで,その表面は等電位面であるが,電流が流れているときは導体内の電位は場所によって異なり,電場が存在する。→電位差電位差計
→関連項目陰極空中電場ポテンシャル

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化学辞典 第2版 「電位」の解説

電位
デンイ
electric potential

静電エネルギー強度因子(容量因子は電気量)であって,静電場の分布を表すスカラー量である.単位の電気量をもつ点電荷を無限遠方からその点まで運ぶのに要する仕事をその点の電位とする.ある一点における電位φと電場の強さ(ベクトル)との間には,

= -grad φ

の関係があり,また電位と電荷分布との間にはポアソンの式

が成立する.ここで,ρは電荷密度,εは誘電率である.実用的には大地電位あるいはそれに準じる基準点に対する電位差によって示し,測定単位にはボルト(V)が用いられる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電位」の意味・わかりやすい解説

電位
でんい
electric potential

静電ポテンシャルとも呼ばれる。静電場の中の1つの点Pから単位の正の点電荷が標準点 (実用上は大地,理論上は無限遠点) まで移動するとき,電場のなす仕事を点Pの電位という。その値は電荷を運ぶ道筋に関係せず,重力場における位置エネルギーと同じく位置座標だけの関数で,スカラー関数 で表わされる。電場 E との関係は 。2つの点の電位差が電圧であり,その SI単位はボルトである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電位」の意味・わかりやすい解説

電位
でんい
electric potential

一単位の電荷を、ある標準点(通常は無限遠点)から、その位置まで径路にかかわらず静かに運ぶのに要する仕事と定義され、国際単位(SI単位)系ではボルト(V)で表す。電界に逆らって電荷を動かすには仕事がいる。このため時間的に変化のない電界が作用している場所には、その位置に応じた位置のエネルギーがあると考えることができるのでこの名がある。とくに、特定の2点間の電位の差を電位差とよぶ。また、径路に関係しない空間座標のみで決まる一価関数であるので、空間内に等しい電位をもった等電位面を描くことができる。

 大地は無限大の導体であることから、電位はゼロとなる。このため、アース(接地)してあれば、絶縁に異常の生じた機器に人が触れても、人と機器の間には電位差がないため感電を防ぐことができる。

[岩田倫典]

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