静電場(時間的に一定の電場)の中におかれた電荷は,各場所で定まる位置のエネルギーをもつ。これは重力場の中におかれた質点に対し,場所の関数として位置のエネルギーが定まるのと同じである。単位電荷(1Cの電荷)が電場の中の各点でもつ位置のエネルギーを,その点の電位という。詳しくいえば,単位電荷が電場から力を受けて点Pから点Qまで移動するとき,電場が単位電荷にする仕事を2点PQ間の電位差と呼ぶ。そして,任意の点と無限遠点(または大地)の電位差をその点の電位とする。上記の仕事が1Jのとき,対応する電位差を1Vと呼ぶ。空間内で電位の等しい点を結んでできる面を等電位面といい,等電位面と電気力線の関係は,地図の等高線と下り勾配の関係に対応する。すなわち電気力線は等電位面と直交し,電気力線に沿って進めば電位は減少する。厳密にいえば,電位が存在するのは静電場に対してだけである。交流回路などのように時間変化があるときには,電場は一般に電荷を源とするクーロン電場と,磁場の時間変化を源とする誘導電場の和である。後者の電気力線は渦状の閉曲線であるから,電気力線に沿って減少する電位を考えることはできず,そのため誘導電場が存在するところでは電位は定義できない。しかし,ふつうの交流回路では,誘導電場が存在するのはコイルの付近などに限られていて,誘導電場とクーロン電場を区別して扱えるので,クーロン電場に対する各瞬間ごとの電位は定義できる。交流回路で電圧と呼ばれるのは,この電位の電位差である。
執筆者:加藤 正昭
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静電エネルギーの強度因子(容量因子は電気量)であって,静電場の分布を表すスカラー量である.単位の電気量をもつ点電荷を無限遠方からその点まで運ぶのに要する仕事をその点の電位とする.ある一点における電位φと電場の強さ(ベクトル)との間には,
= -grad φ
の関係があり,また電位と電荷分布との間にはポアソンの式
が成立する.ここで,ρは電荷密度,εは誘電率である.実用的には大地電位あるいはそれに準じる基準点に対する電位差によって示し,測定単位にはボルト(V)が用いられる.
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一単位の電荷を、ある標準点(通常は無限遠点)から、その位置まで径路にかかわらず静かに運ぶのに要する仕事と定義され、国際単位(SI単位)系ではボルト(V)で表す。電界に逆らって電荷を動かすには仕事がいる。このため時間的に変化のない電界が作用している場所には、その位置に応じた位置のエネルギーがあると考えることができるのでこの名がある。とくに、特定の2点間の電位の差を電位差とよぶ。また、径路に関係しない空間座標のみで決まる一価関数であるので、空間内に等しい電位をもった等電位面を描くことができる。
大地は無限大の導体であることから、電位はゼロとなる。このため、アース(接地)してあれば、絶縁に異常の生じた機器に人が触れても、人と機器の間には電位差がないため感電を防ぐことができる。
[岩田倫典]
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