電子衝撃(読み)デンシショウゲキ

化学辞典 第2版 「電子衝撃」の解説

電子衝撃
デンシショウゲキ
electron impact, electron bombardment

原子分子イオン化励起解離,また固体表面からの二次電子放射,固体の加熱,固体表面の清浄化などを行う目的で,一定の速度に加速した電子で物質を照射すること.質量分析計イオン源で,もっとも普通に使用されているイオン化法である.電子は通常,タングステン,または表面を仕事関数の小さい酸化物などで処理したもの,トリウムを含んだタングステンなどの線に電流を流し,加熱して発生させ,これを静電場で任意のエネルギーに加速する.そのほか,金属紫外線を照射して発生する光電子を使用するものや,強電場を細い金属棒の先端と陽極間に荷電し,電界放射(field electron emission,[別用語参照]電界イオン化)により発生した電子を使用する場合もある.後の2方法は,電子源が低温であり,エネルギー分布が小さい利点がある.原子や分子をイオン化する方法は種々あるが,電子衝撃法は光イオン化法に比べ,エネルギー分解能は劣るが,広範囲のエネルギーをもった電子が容易に得られ,電子線を曲げたり収束したりすることが容易で,強度の強いビームが得られるので,広いエネルギー領域での物質と電子との相互作用のエネルギー依存性を求める点でもっとも有利である.エネルギー分解能を高めるために,電子エネルギー選別器RPD法などが使用されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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