ある系の中に電場をつくったり,電流を流したり,系から電流をとりだしたりする役目を果たす電子伝導体や半導体のこと。電池のような電気化学系は,少なくとも1対の電極から構成されているが,そのうちで,電極から溶液相に向かって正電荷が流れだすほうをアノードanode,逆に溶液相から電極に向かって正電荷が流れこむほうをカソードcathodeと定義する。電気化学系のアノードでは電極反応が酸化の方向に,カソードでは還元の方向に進行する。1対の電極のうち,電位の高いほう(より正の電位をもつ電極,すなわち正極)を陽極,電位の低いほう(より負の電位をもつ電極,すなわち負極)を陰極とよぶことも多いが,陽極とアノード,陰極とカソードは必ずしも対応するとは限らない。混乱をさけるためには陽極,陰極という語を用いないほうがよい。なお,anodeおよびcathodeの呼称は,電流が前者から後者に流れると考えてM.ファラデーがギリシア語のánodos(上り)およびkáthodos(下り)にちなんで提唱したものである。
執筆者:玉虫 伶太
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
真空あるいは誘電体中,あるいは電解質溶液や融解塩のようなイオン伝導体,半導体などのなかに電流を通すために配置された導体(電子伝導体).少なくとも電気が出ていく電極と入ってくる電極の2個あるのが普通である.電極の形状,大きさなどは目的に応じていろいろのものがあり,その材料としても,金属,合金,グラファイト,半導体,金属酸化物など種々の導体が用いられる.また,真空管,放電管などで,電流を流したり,電子流を制御したりする種々の形をした導体も電極とよばれる.電気化学においては,M. Faraday(ファラデー)の命名により,電極反応の進行とともに,溶液側から電極に向かって電子が流れ込む電極をアノード,逆に電極から溶液側へ電子の出ていく電極をカソードという.電池においては,外部回路を通じて正の電気が向かっていく電極を負極,その反対の電極を正極ともよぶが,この場合には,正極がカソード,負極がアノードとなる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
真空、気体、液体、固体などや生体に電圧を加えたり、電流を流したり、信号を取り出したりするための部品をいう。板状または棒状の金属または半導体が多い。たとえば、コンデンサーの極板、真空管のカソード、グリッド、アノード、電池の正極(陽極)や負極(陰極)、電解槽の正極や負極、心電計の電極などがある。電池では電位の高いほうの電極を正極、低いほうの電極を負極とよぶ。電解槽では正電圧を加える側の電極、すなわち陰イオンの集まる電極を正極、これと反対側の電極、すなわち陽イオンの集まる電極を負極とよぶ。また、酸化インジウムスズIndium Tin oxide(ITO)等による透明な電極もあり、液晶パネル、スマートフォンのタッチパネル、電子ペーパー、太陽電池や有機エレクトロルミネセンス(EL)パネル等に用いられている。リチウムイオンなどを含む特殊なガラスの薄膜を使って生体内の電位などを測るためのガラス電極とよばれるものもある。
[布施 正・吉澤昌純]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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