パフラビー文学(読み)ぱふらびーぶんがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パフラビー文学」の意味・わかりやすい解説

パフラビー文学
ぱふらびーぶんがく

ペルシアササン朝の公用語パフラビー語Pahlavīで書かれた文学。パフラビー語は古代ペルシア語と近世ペルシア語の中間に位し、中世ペルシア語ともよばれる。パフラビー語は紀元前300年アルサケス朝からササン朝を経てイスラム期9世紀ごろまで用いられ、現存する作品はゾロアスター教関係の宗教文献が大半を占める。ほかに非宗教文献として教訓、歴史などに関する作品もあるがきわめて少ない。宗教関係の主要文献としては、ゾロアスター教聖典『アベスタ』の翻訳・注釈書『ザンド』をはじめ、9世紀に書かれた『デーンカルド』(聖教事典)、『ブンダヒシュン』(創造の書)がとくに著名で、ほかに『ザートスプラム撰集(せんしゅう)』『マヌシュチフル書簡集』『断疑論』『判決の書』『パフラビー・リバーヤト』などがある。非宗教文献としては『ザレールの回想』、ササン朝の創設者の伝記について7世紀に書かれた『バーバグの子アルダクシールの行伝』『将棋書』などが知られる。以上のほか『千夜一夜物語』の原形や、『カリーラとディムナ』『シャー・ナーメ』などが書かれ、アラビア語に翻訳されたが、原典はいずれも散逸し、訳書が現存するにすぎない。

[黒柳恒男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パフラビー文学」の意味・わかりやすい解説

パフラビー文学
パフラビーぶんがく
Pahlavī literature

古代イラン,ササン朝の公用語パフラビー語 (中世ペルシア語) による文学。作品の大半は散逸し,現存作品は近世ペルシア語の作品に比べてきわめて少い。作品は,ゾロアスター教に関する宗教作品とその他に分類される。現存する主要な宗教作品としては,9世紀に編集された『聖教事典』 Dēnkard,『原初の創造』 Bundahishn,『ザートスプラム』 Zātspramのほかに,ササン朝期の『アルダー・ウィーラーフの書』 Ardā Wīrāf nāmagなどがある。非宗教作品としては,ササン朝創設者の伝説的伝記『アルダシール・バーバグの行伝』 Kārnāmag-i Ardaxshīr-i Bābagān (7世紀) ,『ザレールの回想』 Ayyātkār-i Zarērānのほか,教訓書,法律書,娯楽書などがある。ササン朝期には『カリーラとディムナ』などのインド文学書の翻訳も行われ,それらはイスラム期にさらにアラビア語や近世ペルシア語に訳された。

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