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伝記 でんき biography

翻訳|biography

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

伝記
でんき
biography

個人の生涯を,事績を中心に記録したもの。文学的な伝記は,主題となる人物をいきいきと描き,事実の記述も正確でなければならず,作者の個性,歴史観も要求される。日本では伴蒿蹊の『近世畸人伝』 (1790) ,森鴎外の『渋江抽斎』 (1916) などがあるが,前者は逸話を主とし,後者は史料の正確さとともに文学的な味わいもある。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉の解説

しるし‐ぶみ【記/史】

記録。また、文書。
「皇后の崩年―に載すること無し」〈宣化紀〉
文学と史学。
「天皇仏の法(みのり)を信(う)け給はずして―を愛(この)み給ふ」〈敏達紀〉

でん‐き【伝記】

個人の生涯にわたる行動や業績を叙述したもの。「偉人の伝記
古くから伝えられている事柄の記録。

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百科事典マイペディアの解説

伝記【でんき】

人の生涯またはその言行を記録した書物。英語のbiographyはギリシア語のbios(生涯)とgraphein(書く)を語源とする。西欧では古代ギリシアで,プルタルコスの《英雄伝》やクセノフォンの《ソクラテスの思い出》が伝記として成立した。
→関連項目ノンフィクションモーロア

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世界大百科事典 第2版の解説

でんき【伝記】

〈特定の個人の生涯の歴史〉と伝記を定義したのは,17世紀イギリスの詩人・批評家ドライデンであるが,伝記と歴史とのつながりの深さには疑いの余地がない。伝記的な要素をふくまない歴史はほとんどなく,古い歴史書は伝記の連鎖という形のものが多い。まず歴史という母胎ではぐくまれ,やがてひとり立ちするに至ったものが伝記だともいえる。中国の《史記》では,列伝が不可欠の構成要素をなしており,プルタルコスの《英雄伝》は,ギリシア,ローマの史上有名な人物を2人ずつ組み合わせ対比列伝であった。

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大辞林 第三版の解説

でんき【伝記】

個人の生涯の事跡を書いた記録。 「偉人の-」
記録されて伝えられているもの。記録。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

伝記
でんき
biography

ある実在した人物の生涯を、それ以外の人が叙述したもの。対象となる人物は何らかの点で歴史に名を残した人物であるから、伝記は歴史研究の一形式とみなしうる。また一人の人間の性格と事蹟(じせき)に精彩を与えるためには物語的な要素も必要とされ、したがって優れた伝記は文学ジャンルの一つでもあり、ときに「評伝」とよばれることもある。歴史学や文学研究の立場からは批判もあるが、一つのジャンルとして幅広い人気を博しているのは世界的に共通した現象である。[小倉孝誠]

古代・中世

古代中国では、紀元前1世紀に司馬遷によって『史記』が著されており、そのなかの「列伝」が伝記の嚆矢(こうし)とされる。その後の中国や日本の伝記に及ぼした影響は無視しがたい。
 古代ギリシアでは、紀元前4世紀にクセノフォンが『ソクラテスの思い出』で師の生涯を理想化して語っている。後世への影響が大きかったのは、古代ローマのプルタルコスやスエトニウスである。前者の『対比列伝』(別名『英雄伝』)はギリシアとローマの歴史的人物を2人ずつ対にしてその生涯を描いた作品であり、その後長い間にわたって西洋における伝記のモデルとなった。後者の『ローマ皇帝伝』はカエサルからドミティアヌスにいたる12人の皇帝の生と行動を物語る。どちらも同じ種類の人間たち(皇帝、将軍、哲学者など)をシリーズにして伝記を綴(つづ)ったもので、個人の内面と全体像を浮かびあがらせようとする意図はなく、むしろ人物の類型に関心を抱いていた。
 キリスト教が支配的だった中世において、伝記はおもに聖人、殉教者、教父らの生涯を記した「聖者伝」という形式をまとった。それを代表するのはヤコブス・デ・ウォラギネJacobus de Voragine(1230?―98?)の『黄金伝説』であろう。聖者伝は対象となる人物の言行を通じて、信仰と受難の英雄たちを模範的なキリスト者として民衆に提示するという機能を果たしていた。古代から中世までの伝記は、人物について客観的な情報をもたらすというよりも、その生涯から政治的、倫理的、宗教的な教訓を引き出すことを目的にしていたのである。[小倉孝誠]

西洋近代

ルネサンス期に入ると個人意識が高まり、人間の自由と尊厳が重視されて人間中心主義の思想が流布する。こうして伝記は宗教色をしだいに失って世俗化され、叙述の主眼は個人としての人間性の探求に移っていく。ボッカチオの『ダンテ伝』、イタリアの画家バザーリの『美術家列伝』がこの時代のものとしては特筆に値する。
 伝記の分野でみごとな才能を示したのはイギリスである。17世紀にはウォルトンが詩人ジョン・ダンの優れた伝記を著し、オーブリーが同時代の著名人100名以上の生涯を短い文章に集めた『小伝記集』を書いている。そして18世紀になると、サミュエル・ジョンソンが『サベッジ伝』や『イギリス詩人伝』によって、文学ジャンルとしての伝記を確立した。そのジョンソン自身を伝記の対象にしたのがボズウェルの『ジョンソン伝』であり、日常の言動を細かく観察、記録したものに基づいた綿密な著作になっている。
 人の生涯を語るというのは古くから存在する営みだが、その方法や意図は時代によって異なる。同時代の世界観や人間観を反映するし、人間や世界について問いかけるさまざまな学問・科学の影響を受ける。19世紀は都市化や社会不安に伴って人間の孤独と疎外感が深まり、他方で科学と実証主義への信頼が高まった時代である。伝記は個人の内面性への問いかけを深めていき、同時に、綿密な資料調査と実証的な手続をより重視するようになった。イギリスでは批評家カーライルの『クロムウェル伝』が優れており、フランスではサント・ブーブが新たな文学評伝の様式を確立した。ヨーロッパ諸国で伝記辞典のシリーズ化が始まったのもこの時代で、フランスのルイ・ガブリエル・ミショーLouis-Gabriel Michaud(1778―1852)が編纂(へんさん)した『世界伝記集』Biographie universelle(85巻。1811~62)や、イギリスのレズリー・スティーブンLeslie Stephen(1832―1904)が最初の編集者になった『国民伝記辞典』Dictionary of National Biography(初版66巻、のち22巻に再編。1885~1900)がその例である。
 20世紀には伝記のスタイルがさらに多様化する。フロイトの精神分析、深層心理学、直観の哲学などの影響のもと、統一的な主体という概念が疑われだしたために、個人の矛盾をそのままさらけだしたり、人間の秘められた心理や動機をえぐりだそうとする傾向が強くなった。そのような伝記の一つの頂点がサルトルの『聖ジュネ』であり、フロベール論『家(うち)の馬鹿(ばか)息子』である。他方で、物語風の伝記も依然として根強い人気をもつ。イギリスではストレーチーが『ビクトリア朝のおえらがた』において、犀利(さいり)で辛辣(しんらつ)な人物描写を行い、オーストリアのツワイク、フランスのモーロアやトロワイヤもまた多産な伝記作家として名高い。[小倉孝誠]

日本

日本では、すでに江戸時代に『信長(しんちょう)記』『太閤(たいこう)記』『近世畸人(きじん)伝』などが書かれているが、近代的な伝記が出現するのは明治期になってからである。山路愛山、幸田露伴らが武将の伝記を書き、森鴎外(おうがい)は『渋江抽斎』などにおいて「史伝」とよばれる独自のジャンルを創出した。この作品では、江戸時代の儒者とその家族・子孫の伝記を綴(つづ)るとともに、その過程で作者が行った資料収集、人との出会いなどを語り、創作プロセスを明らかにしてみせる。史伝の系譜は、永井荷風の『下谷叢話(したやそうわ)』や中村真一郎の『頼山陽とその時代』に連なっている。現代では、中野好夫の『蘆花(ろか)徳冨健次郎』や江藤淳(じゅん)の『漱石(そうせき)とその時代』など、批評家が書いた作家の評伝に傑作が多い。また司馬遼太郎(りょうたろう)の一連の歴史小説は、日本史上の偉人を主人公にした、小説化された伝記とみなすこともできよう。[小倉孝誠]
『アルナルド・モミリアーノ著、柳沼重剛訳『伝記文学の誕生』(1982・東海大学出版会) ▽中村真一郎著『文学としての評伝』(1992・新潮社) ▽中野好夫著『伝記文学の面白さ』(1995・岩波書店) ▽『伝記・自叙伝の名著 総解説』改訂版(1998・自由国民社) ▽佐伯彰一著『伝記のなかのエロス』(中公文庫) ▽P. M. KendallThe Art of Biography(1965, George Allen and Unwin, London) ▽Daniel MadelenatLa Biographie(1984, PUF, Paris) ▽Georges GusdorfLignes de vie(1991, Odile Jacob, Paris)』

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