レランス修道院(読み)レランスしゅうどういん

改訂新版 世界大百科事典 「レランス修道院」の意味・わかりやすい解説

レランス修道院 (レランスしゅうどういん)

フランスの地中海沿岸都市カンヌの沖にあるレリヌム島の修道院。5世紀初頭,セナトル(元老院)貴族ホノラトゥスが東方巡礼先で知った修道制を手本にして設立された。当初使用された修道院規則は不詳であるが,修道生活の形態は共住制と散居制とが併存していた。修道士の多くはゲルマン大移動の際,南ガリアに避難した北東ガリア出身のセナトル貴族であった。彼らは祈りと手仕事のかたわら,教父と古典作家の著作を学んだが,彼らのうちからプロバンスを中心として,ローヌおよびソーヌ両川流域諸都市の司教が輩出した。5世紀から6世紀にかけて,レランスLérinsが高級聖職者養成とゲルマン世界へのキリスト教信仰および古典文化の伝達とに果たした役割は大きい。660年フリューリの修道士エグウルフがレランスの修道院長として,ベネディクト会修道制を取り入れたとき,レランスの繁栄期が始まり,7世紀末修道士は3700人に達し,8世紀前半のイスラム教徒の西地中海進出にもかかわらず,その数は増加し,10世紀後半の同教徒による略奪まで続いた。同事件によって,レランスは一時的に衰退したが,978年両院長マヨルスおよびオディロがクリュニーの改革修道制を敷き,11世紀には教皇庁保護もとに,ロアール川以南のフランス南部および南西部がレランスの教勢下に入るという最盛期を迎えた。なお19世紀以来,レランスはシトー会系修道院となっている。
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