日本大百科全書(ニッポニカ) 「アウド」の意味・わかりやすい解説
アウド
あうど
Awadh
北部インドのガンジス川左岸地方をいう。中心地はラクナウ。アウド地方は古代からインドの中心地の一つであったが、固有の歴史をもつようになったのは、ムガル帝国末期になってからである。18世紀前半、アウランゼーブの死後、ムガル帝国が分解の様相を深めると、時のアウド太守も独立的な動きを強めていった。アウド国は、19世紀初めにイギリス東インド会社と従属同盟を結び、イギリスの保護国のような存在となっていったが、1856年にイギリスによってとりつぶされた。これが「インドの大反乱」(セポイの反乱)の一つの原因となったといわれている。その後、ラクナウはインド政治の一つの中心地となり、1916年にはインド国民会議派とムスリム連盟との間の協定がここで結ばれたりした(ラクナウ協定)。アウド地方にはタールクダールとよばれる領主的、地主的階層が広範に存在し、強い影響力をもっていた。インド独立(1947)後の土地改革の一つの大きな課題は、タールクダール制をどうやって廃止するかということであった。
[小谷汪之]