改訂新版 世界大百科事典 「アクターズスチュディオ」の意味・わかりやすい解説
アクターズ・スチュディオ
Actors' Studio
アメリカのニューヨークにある俳優教育機関。1947年,演出家E.カザン,ロバート・ルイス,女優で演出家のチェリル・クローフォードによって創設され,同年,演出家L.ストラスバーグが加わった。ストラスバーグは50年に運営責任者となり,職業俳優の再教育のためにつくられたこの機関に明確な指導理念を与えた。彼が体系化した演技術は,K.S.スタニスラフスキーの理論をアメリカの風土に移したもので,整合性への感嘆と単純さへの批判の両方をこめて〈ザ・メソッド〉と呼ばれることがある。その要点は,演ずべき役を演技者の実生活の体験に基づいてとらえ,役の人物の内面心理を重視するところにある。この方法は現実感豊かな演技を生み出す一方,劇を矮小化したり,日常生活を超えた体験を表現しそこねたりするという欠点をもつ。メソッドはアクターズ・スチュディオの指導者たちがかつて所属していた劇団グループ・シアターが目ざしたリアリズム演技の理論化で,類型的で不自然な演技を排するという出発点には必然性があったが,やがてそれ自体,ひとつの類型となった。しかし,1950年代から60年代のアメリカ演劇,映画に清新な演技を提供した。アクターズ・スチュディオに在籍した俳優には,M.ブランド,J.ディーン,ポール・ニューマン,ジュリー・ハリスなどがいる。60年代には演劇の制作も行った。
執筆者:喜志 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報