コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

演技 えんぎacting

翻訳|acting

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

演技
えんぎ
acting

人間の身体運動,言語,メイキャップなどにより,戯曲のなかに書かれた人物を具象化し,観客にある影響を与えようとする行為。演技に関しては昔から多くの議論がなされてきたが,大別すると次の2つの見解に分れる。 (1) 演技の目的は現実の錯覚または幻想をつくりだすことであり,俳優は現実を模倣し再現する技術者である。 (2) 演技の目的は脚本のなかの人物を解釈し批判することであり,演技の本質は,俳優の現実に対する認識力や批判力にある。前者によれば,俳優の仕事は自分の個性を捨てて役の感情に没入することであり,後者によれば,俳優は常に自分を失わず,感情のなかにおいても自己を抑制し,観客に意図した効果を与えなければならないということになる。実際には,この両極端の理論のうえに立って演技がなされるのではなく,いずれかに傾斜しながら折衷の方法をとっているわけである。ブレヒトの演技における異化効果は,後者の理念を強調したもの。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

えん‐ぎ【演技】

[名](スル)
見物人の前で芝居・曲芸・歌舞や、体操などの技を行って見せること。また、その技。「模範演技
本心を隠して見せかけの態度をとること。「ことさらに仲のよさを演技する」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版の解説

えんぎ【演技】

俳優が観客のために,身体の動きや言葉や扮装などによって,ある人物を表現すること。俳優術ともいう。演技は,その発生時には,無意識な踊り,物まねにすぎなかったが,演劇分化,発達につれて独立の表現形式となった。日常の言動に近い写実的なものから,抽象的な様式のものまで,その演劇形態に応じて様式はさまざまである。 古代ギリシアのアリストテレスはその《詩学》のなかで,〈人間には何かをまねて喜ぶ本能と,まねられたものを見て喜ぶ本能があり,それらが演劇を成り立たせている根本的な要素である〉といっているが,俳優と観客が,戯曲とともに演劇の基本的構成要素となっている。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

えんぎ【演技】

( 名 ) スル
俳優などが舞台で芸を演じて見せること。また、そのわざ。 「悪女役を巧みに-する」
体操競技やフィギュア-スケートなどで、一定の方式にしたがって、選手が行う技。 「模範-」
いかにもそれらしく振る舞うこと。いつわりの態度。 「彼女の涙は-だった」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

演技
えんぎ

演劇において俳優が観客の前で身ぶりやことばをもってある事件や人物などの行動を表してみせること。ドラマdramaの語が行動するという意味のギリシア語dranから出ていることに示されるように、演技は演劇の本質であり、本来何もない空間である舞台において観客の眼前にいっさいを生み出す作業である。今日では俳優が身ぶりとことばによって映画、テレビ、ラジオなどの媒体の素材となることもいい、歌曲、舞踊、曲芸、体操などの技をやってみせることも含まれる。日本語の「演技」は「技を繰り広げてみせること」を意味するので、見せ物(ショー)として意識されることが多く、日常の見知られた自分を隠し別人として行動する意味にも用いられることになる。これは西欧における、ドラマを成り立たせ展開していくアクション(行動)とは異質の概念であることは注意される必要がある。
 人類の最初の演技は物真似(ものまね)による身ぶり信号だったと考えられるが、やがて災厄を祓(はら)い、豊穣(ほうじょう)を祈る呪術(じゅじゅつ)の踊りとなる。日本の俳優の古語「わざおぎ」の「おぐ」は神霊を招き寄せること、神がかりして踊ることであって、天岩戸(あめのいわと)の前での天鈿女命(あめのうずめのみこと)の乱舞が起源と言い伝えられている。神のことば、神に祈ることばが文字に記されやがて1人の作者が台本を書くようになると、神事から離れた演劇が本格的に成立する。その時期は西欧ではギリシア悲劇、日本では能の成立時とされる。台本の文学的完成が進むにつれ、演技は神がかりや即興を脱して朗々たる台詞(せりふ)の吟唱と華麗な身ぶりによって明確な様式をつくりだした。日本の代表的な演劇である歌舞伎(かぶき)の演技は文字どおり歌舞が基本であり、男性のみの俳優がまず女方(おんながた)から修行に入ることなどに代表されるように、人間の生理さえ離れて虚構の世界をつくりだす様式美の力をみることができる。
 西欧ではギリシア悲劇において合唱と群舞の間に挟まれる主人公たちの対話の場面がしだいに拡大独立して、ルネサンスを経て人間の対立と葛藤(かっとう)を描く近代のドラマへと発展する。演技は、激しい情熱と複雑な心理をもつ近代的人間像をリアルに表現する技術となり、鋭い人間観察とその再現が名優の条件となった。やがて19世紀には演出家の芸術意図によって統一される劇団が現れ、アンサンブル演技が演劇界の主流となると、文学者―演出家―俳優のヒエラルキーが成り立ち、俳優の演技は上級者の指示を忠実に模倣し、よかれあしかれ舞台の一部品をつくりだす作業にすぎなくなった。20世紀初めモスクワ芸術座において近代演技の頂点が形づくられるが、その演出家兼俳優のスタニスラフスキーは従来の演技を整理研究して、初めて一貫した心身の訓練に基づく演技の体系をみいだした。このスタニスラフスキー・システムは以来通俗化されつつ現在の世界の演技術の基盤となってもいる。
 しかし、20世紀が深まるにつれ、演技は大きく変貌(へんぼう)し、メイエルホリドのビオメハニカбиомеханика/biomehanika(人間工学)、アルトーの「残酷の演劇」、ブレヒトの叙事詩的演劇の主張などが相次いで現れる。さらにアメリカにおける深層心理の表出の試みなどと交錯して、文学の放棄、統一ある性格の破壊、心理主義の打破、身ぶりと叫びの拡大、仮面や人形の使用、ハプニングhappeningなど舞台上に激しい生の躍動を回復する方法が求められてきた。近年、演劇の枠を超えたパフォーマンスperformanceと名づけられた表現活動なども注目されているが、現代は神がかりから歌舞様式、なまなましい人間情念の表出まで、演技の全歴史を一気によみがえらせる新しい表現の模索の時代といえるだろう。[竹内敏晴]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の演技の言及

【演出】より

…演出とは,舞台のために書かれた戯曲に,あらゆる方法によって魂を与え,光を与え,生命を与えることである。戯曲を上演するためには,その中心となる俳優の演技をとりまく舞台装置,照明,音楽,音響効果などさまざまな要素が必要であるが,そのすべてを統一して調和させるのが演出の仕事である。演出家の使命は現代演劇の発展とともに重要性を増してきたが,この役割は演劇の歴史とともにあったといえる。…

【台詞】より

…したがって,よい作者は,言語の指示内容を減殺せぬよう,せりふに過剰な説明や修飾をつけ加えるべきではなく,よい俳優は,せりふの表現内容を破壊せぬように,ひとりよがりの興奮や陶酔を避けるべきだ,ということになろう。
[〈立ち聞き〉のために語られる言葉]
 ところで,せりふの指示内容と表現内容とのこの関係は,当然,演劇的な行動,すなわち広義の演技行動の本質的な構造に対応している(〈戯曲〉の項参照)。演技行動とは現実行動の再現であり,現実の目的をかっこに入れた行動であって,その分だけ行動の過程を重視し,細部の手つづきを入念に行う行動である。…

※「演技」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

演技の関連キーワードペア[フィギュアスケート]シンクロナイズド飛込フリースケーティングデモンストレーションフィギュアスケートオーバーアクションエアページェントコン ヒョジンno missパフォーマーキム ヒソンパク ヘジンルーチン競技アクティング演奏会形式駄目を出すツケ(附)一皮剝けるジャッジ体操競技

今日のキーワード

いい夫婦の日

11月22日。通商産業省(現経済産業省)が制定。パートナーへの感謝の意を示し、絆を深める。...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

演技の関連情報