日本大百科全書(ニッポニカ) 「アティス」の意味・わかりやすい解説
アティス
あてぃす
Attis
フリギアの神。神々の母である大地の女神キベレに愛され、その伝説はキベレ信仰とともに古代ギリシア・ローマ世界に広まった。オウィディウスによると、この美しいフリギアの少年アティスを熱愛した女神キベレは、彼を身近におきたいために自分の神殿の番人にした。しかし、アティスはニンフのサガリティスに恋をしたので、怒った女神はニンフの宿っている木を切り倒して彼を狂わせた。そのとき、アティスは狂気のあまり自らを去勢したといわれるが、のちに女神と和解して彼女の従者となった。
一般にアティスはキベレの車に乗り、フリギアの山々を駆け巡る姿で描かれているが、元来はアドニスと同様、植物の枯死(こし)と復活を象徴する神格である。
[小川正広]