日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アトランチック・サーモン
あとらんちっくさーもん / 大西洋鮭
Atlantic salmon
[学] Salmo salar
硬骨魚綱サケ目サケ科に属する魚。北大西洋に産する固有種。北極圏から、ヨーロッパ側ではポルトガルまで、アメリカ大陸側ではアメリカ合衆国のコネティカット州まで広く分布する。産卵のために河川を遡上(そじょう)するが、湖には陸封型が生息している。体は典型的マス形で、多少側扁(そくへん)する。尾びれ後縁の切れ込みは浅い。背面は緑がかった褐色で、体側は銀色を帯び、体に黒い斑点(はんてん)かX字形の斑紋が散在する。産卵期が近づくと、とくに雄の下あごが伸びて先が鉤(かぎ)状に曲がる。体は暗褐色になり、頭部と体側に赤い斑点が出てくる。産卵後は全体が黒くなるのでブラックサーモンとよばれる。体長40~100センチメートル、産卵期は10月から翌年1月、孵化(ふか)後の稚・幼魚は、2~6年淡水生活を送ったのち、体色が銀色に変わるスモルトになって降海する。海で1年越冬して河川にのぼる魚をグリルス、2年以上越冬するものをサーモンとよんでいる。成魚は産卵後に死ぬものもあるが、生き延びてふたたび降海するものもある。海にすむものは重要な漁業資源であり、湖にすむものは釣りの好対象魚である。
[疋田豊彦]