卵膜中で発生が進んだ動物の胚(はい)または幼生が卵膜を破って外界に出ること。胎生の哺乳(ほにゅう)類でも孵化は行われるが、一般には卵生と卵胎生の動物についていう。孵化には、機械的に卵膜や卵殻を破る方法と化学的に溶かす方法があるが、両方によるものもある。機械的な方法としては、体の屈伸運動によるほかに、単孔類(カモノハシ、ハリモグラ)、鳥類、爬虫(はちゅう)類では嘴(くちばし)や口の先端に、多くの昆虫類では頭や口の周りなどに、孵化のすこし前に卵歯(らんし)という堅い突起ができて、これでつついたり圧力をかけて、殻を壊す。卵歯は孵化後に退化する。化学的な方法は、両生類、魚類、ある種の無脊椎(せきつい)動物(ウニ、ホヤ、イカ、ある種のバッタなど)にみられる。胚は特異的な酵素(孵化酵素)を分泌して卵膜を内側から消化して溶かし、孵化する。この酵素はタンパク質分解酵素であり、安定な卵膜も容易に溶ける。孵化はかなり短時間で行われる。メダカでは30分から1時間ぐらいである。孵化に近づくと胚の呼吸量が急に増えるので、これが孵化の引き金になっているといわれる。孵化がどの発生段階でおこるかは、動物によって違っている。ウニは早い段階の胞胚期でおこり、昆虫やカエルは幼生で、魚類は仔魚(しぎょ)で、鳥類は雛(ひな)で孵化し、器官の分化が進んだ状態になっている。
なお、家畜の卵、魚卵、蚕卵などを発生実験や産業化のために人力を加えて孵化させることを、人工孵化という。
[小野山敬一]
家禽(かきん)では孵化に要する時間は種によって、また同一種でも孵卵前の条件によって多少異なる。ニワトリでは胚が孵化し始めてから孵化し終わるまで約10時間を要する。あまり遅れて孵化した雛は弱いものが多い。卵殻を破るときは、鶏胚の頸(けい)部に特別な孵化筋が発達し、また吻(ふん)の上方に堅い卵歯が生じ、これで卵内からつついて卵殻を破る。この筋肉と卵歯は孵化後退化する。孵卵日数は家禽の種によって異なり、ニワトリは21日である。親鳥が抱卵して孵化させる自然孵化の場合は体温で保温し、抱卵中ときどき体をずらして転卵し、朝露などで羽毛をぬらして卵に湿度を与えて乾燥を防ぎ、羽を動かして換気することによって二酸化炭素を排出し、酸素を補給して孵化を成功させる。孵卵場で多数の種卵を孵化させる人工孵化の場合は、孵卵器を用いて人為的に自然孵化と同じ条件をつくりだして孵化させる。
[西田恂子]
発生中の胚が卵膜を破って卵の外に出てくる現象をいう。卵生の動物では孵化は当然母体外で生じるが,胎生のものでは母体内で生じることになる。孵化の時期は動物によって異なり,ウニのように胞胚期のものから,ニワトリのように親とよく似た形にまで発達してから生じるものまでいろいろである。体外で孵化する場合,無脊椎動物や魚類,両生類では,まわりの水温や日長など外界の自然条件のみによって発生が進行するが,爬虫類,鳥類では一定の温度を維持することが発生の必須条件となるので,土中に埋めたり,抱卵することが必要となる。また家禽などでは人工孵化が行われる。孵化に際して卵膜を破るのに機械的な力を用いる例としては,単孔類,鳥類,爬虫類,昆虫類(コオロギ,トンボ,ノミなど)の胚に見られる卵歯egg toothがある。これは胚の口吻部や胚をおおう膜上にできる固い突起で,これで卵殻を破る。このほか,孵化酵素という一種のタンパク質分解酵素を胚が分泌し,化学的に卵膜を弱くすることも,ウニ,ホヤ,イカ,魚類,両生類などで知られている。
執筆者:石居 進
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