日本大百科全書(ニッポニカ)「産卵」の解説
産卵
さんらん
動物が卵を産むことで、体内受精動物では受精卵、体外受精動物では未受精卵が体外に排出される。なお、受精卵の場合には、体内でやや発生の進んだ初期胚(はい)の排出も広義には産卵という。水中に卵を排出する場合はとくに放卵ともよぶ。卵は卵巣から放出(排卵)されて、多くは輸卵管を通って体外に出るが、しばしばその間にゼリー様物質や殻などの保護物が卵の周囲に付加される。多くの動物で産卵は場所や季節あるいは時間が決まっており、たとえばニッポンウミシダは10月上旬の大潮の日に産卵し、サケは数年の航海ののちに母川に帰って産卵する。産卵場所も、卵や幼生に都合のよい所が選択され、産卵のために営巣する動物も多く、また他の動物の体内に産卵する例もある。1回に産卵される卵の数を産卵数といい、その数は1個から数万に及ぶものまでさまざまである。自然状態での産卵は、温度・日長時間そのほか環境の種々の条件や、体内のホルモンの状態など多くの要因によって支配されている。いくつかの動物では、そのことを利用して人為的に産卵させることが可能になっている。
[八杉貞雄]