改訂新版 世界大百科事典 「アメリカハブ」の意味・わかりやすい解説
アメリカハブ
熱帯アメリカで恐れられるクサリヘビ科アメリカハブ属Bothropsに属する毒ヘビの総称。49種が中央・南アメリカに広く分布している。最大種はフェル・ド・ランスB.atrox(英名fer-de-lance)で全長1.9~2.4m,パナマ,コロンビア,ブラジル,ペルーなどの降雨林に生息する。地上性で,餌のネズミ類を求めて耕地や居住区にも侵入するため,人畜の被害が多い。ハブ類に近縁で形態,生態ともに似るが,卵胎生で,1回に60~70匹を生む。ブラジル南部,パラグアイなどに分布するハララカハブB.jararacaやウルトゥハブB.alternatusは全長1.5m,毒牙(どくが)の長さは2cm余りで,個体数が多くまた攻撃的なため被害が多い。毒性が強く,ほとんど胴が地面から離れるほど跳躍し,すばやく音もなくとびかかるため,きわめて危険である。樹上性の種類は全長1mほどの小型で,尾は枝を巻く力があり,それほど攻撃的でない。その1種マツゲハブB.schlegeliは褐色と緑色のまだら模様の効果的な保護色の持主。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報