日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アルフォンソ・マルティネス・デ・トレード
あるふぉんそまるてぃねすでとれーど
Alfonso Martínez de Toledo
(1398―?)
スペインの小説家。トレドに生まれる。タラベラの主席司祭の名でも知られる。伝記、歴史書も残しているが、彼の名を不動にしたのは1438年の風刺作品『笞(むち)』Corbachoである。自分の聖職者としての名をとって『タラベラの主席司祭』Arcipreste de Talaveraと題したものの、通称『笞』の名で知られるようになった本書は、肉欲を排撃するだけでなく、女性に対する痛烈な風刺に徹する。こうした風刺を通して人間の弱い本性をあばき、人を神への純正な愛に導こうとする。また占星術に対するスコラ哲学の立場を詳しく論証する第3部は、当時の世界観を知るうえで貴重な記録といえる。ラテン語的構文と通俗的な言い回しを融合させた文体を特徴とする。
[清水憲男]