日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化アンチモン」の意味・わかりやすい解説
酸化アンチモン
さんかあんちもん
antimony oxide
アンチモンの酸化物。次の3種の化合物が知られている。
(1)酸化アンチモン(Ⅲ) 三酸化二アンチモンともいう。天然には方安鉱およびバレンチン鉱として産する。塩化アンチモン(Ⅲ)の加水分解生成物を炭酸ナトリウム水溶液と煮沸すると、無色の立方結晶(方安鉱)が得られる。
Sb4O6分子が含まれ、1000℃以下の蒸気密度はこれに相当する。570℃で斜方結晶(バレンチン鉱)に転移する。水に難溶だが、塩酸、アルカリに溶ける。アルカリ水溶液に溶けると、亜アンチモン酸イオンSbO2-をつくる。炭素または水素と熱すると金属アンチモンが得られる。白色塗料、不燃化剤に用いられる。
(2)酸化アンチモン(Ⅴ) 五酸化二アンチモンともいう。塩化アンチモン(Ⅴ)の加水分解生成物を275℃で脱水する。黄白色粉末。化学式Sb2O5、式量323.5。300℃で分解して酸化アンチモン(Ⅲ)になる。アルカリ水溶液には溶けてアンチモン酸イオン[Sb(OH)6]-をつくる。無機陽イオン交換体としての用途がある。
(3)酸化アンチモン(Ⅴ)アンチモン(Ⅲ) 四酸化二アンチモンともいう。酸化アンチモン(Ⅲ)を約900℃に熱する。黄色結晶。普通Sb2O4と記されるが、酸化アンチモン(Ⅴ)と酸化アンチモン(Ⅲ)の混合物と考えられ、水、エタノールに難溶。式量307.5。
[守永健一・中原勝儼]
酸化アンチモン(データノート1)
さんかあんちもんでーたのーと
酸化アンチモン(Ⅲ)
Sb2O3
式量 291.5
融点 656℃
沸点 1550℃
比重 5.19(立方晶系)
5.76(斜方晶系)
斜方晶系の構造(無限鎖)
酸化アンチモン(データノート2)
さんかあんちもんでーたのーと
酸化アンチモン(Ⅴ)
Sb2O5
式量 323.51
比重 3.5~4.0