改訂新版 世界大百科事典 「イギリス石炭庁」の意味・わかりやすい解説
イギリス石炭庁 (イギリスせきたんちょう)
National Coal Board
イギリスの国営石炭会社。第2次大戦後,労働党政権のもとで,1946年7月に〈炭鉱業国有化法〉が成立したことにより,イギリスの石炭業は国有化された。同時に,その経営に当たる機関としてこの石炭庁が設立された。石炭庁の権限は,エネルギー大臣が行政的にも財政的にも掌握している。石炭庁のもとに九つの地方石炭庁があり,さらにそれがいくつかの地域に分割され,それぞれの地域総支配人のもとに個々の炭鉱および炭鉱経営者が所属する形となっている。国有化当初の課題は石炭不足を解消することであり,そのために,採炭の機械化,立坑の拡張等の措置によって石炭業の振興がはかられた。この結果,生産高は1945年の1億8000万tから,57年には2億2000万tへ復帰した。しかしその後,他の諸国同様,〈エネルギー革命〉に見舞われ,石炭庁による各種合理化政策(スクラップ・アンド・ビルド)と市場確保政策が打ち出されたにもかかわらず,石炭の競争力は回復せず,生産は低下傾向をたどった。80年代には〈ブリティッシュ・コールBritish Coal〉と改称され,94年民営化された。
執筆者:熊坂 敏彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報