日本大百科全書(ニッポニカ) 「うなぎのたいこ」の意味・わかりやすい解説
うなぎのたいこ
落語。野幇間(のだいこ)を主人公にした卓抜な幇間噺(ほうかんばなし)。野幇間の一八(いっぱち)は、あてにしていた芸者屋の女将(おかみ)が2人とも留守で祝儀をもらい損なったので、せめて昼飯だけでもたかろうと、往来の男に食い下がって、とうとう鰻(うなぎ)をごちそうになる。鰻屋の2階でおせじをいいながら飲んだり食ったりしているうちに、男は便所に行くといって部屋を出たまま帰ってこない。女中に聞くと、男は土産物(みやげもの)まで持って、自分はお供だから勘定は2階の人にもらってくれといって帰ってしまったという。一八はがっくりして、ぶつぶついいながら帰ろうとすると、汚い下駄(げた)がそろえて置いてある。「おい、冗談いっちゃいけねえ、こんな小汚(こぎた)ねえ下駄履くかい、芸人だ。今朝買った5円の下駄だ」「あッはッはッは、あれはお供さんが履いてまいりました」。幇間という職業が盛んだったころの実話を落語化したものといわれ、8代目桂文楽(かつらぶんらく)が得意としていた。
[関山和夫]