改訂新版 世界大百科事典 「ウルスラ」の意味・わかりやすい解説
ウルスラ
Ursula
聖女。伝説によれば4世紀または5世紀のブリタニア王の娘。才色兼備で,多くの求婚者のうち異教徒の王子に,キリスト教に改宗すること,1万1000人の侍女を従えて3年間ローマに巡礼に行くことを認めること,という条件を出した。王子はこれを承諾。侍女たちを伴ってローマに赴き,帰途ケルンでフン族に襲われた。侍女らは殺され,ウルスラも胸に3本の矢を受けて殉教。後に1万1000の天使が現れフン族を追い払ったという。殉教地ケルン(その守護聖人である)をはじめ,ライン西部,オランダ,北フランスなどで熱心に崇拝された。孤児,毛織物組合の守護聖人。頭痛を癒すとも信じられた。美術作品では,冠やマントをつけた姿をとり,殉教具の矢を持つ。巡礼杖を携え,多くの侍女を伴うこともある。教皇謁見の場面,殉教の場面,ベッドで眠る姿(伝説によれば殉教を予告する夢を見た)としても表される。ケルンには彼女にささげられた教会(ザンクト・ウルスラ教会など)が多く,彼女を描いた作品も多く残る。祝日は10月21日。
執筆者:井手 木実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報