袖が無くケープのように肩から腕をおおう打合せのない外套(がいとう)を指す。正しくはマントーといい,英語のマントルmantleに当たる。長さはさまざまであるが,中世末期からは夜会や儀式用の裾を引く長い丈のものもあらわれた。マントは古くから用いられ,前をピンでとめたウールの男子用マントが青銅器時代前期のデンマークの遺跡から出土している。古代ギリシアやローマでもマントの一種とみられる外衣が使われていた。中世には広く普及し,男女ともにコットの上に着用し,前の打合せはボタンやブローチ,飾り紐でとめた。ルネサンス期には毛皮を縁どりしたものや,真紅や黒のタフタ,ベルベットなどでつくられた豪華なものがあらわれた。17世紀には毛皮のマントも流行し,ルイ14世の白テンのマントが肖像画によって知られる。マントは庶民にも用いられ,旅行者や羊飼いは地の厚い粗末なウールのフードつきマントを着ていたし,アイルランドの貧しい女性たちは白い粗毛を縁どりに使って毛皮のように見せていた。19世紀には腕を出せる切り込みの入った形があらわれた。
日本では南蛮風俗の影響で合羽(かつぱ)が江戸時代を通じて用いられ,明治に入るとウールの洋風のマントは軍服や学生の外套として用いられるようになった。また同形のインバネスは和服の上に着ていた。1930年代以降,現在のようなオーバーコートにしだいに変わっていったが,女性のおしゃれ用として残っている。
執筆者:池田 孝江
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外套(がいとう)やベールを意味するラテン語のmantellumを語源とする、衣服の上に羽織って着るゆったりとした外衣の総称。古代ギリシアのヒマティオン、古代ローマのパルラのような、女子用の袖(そで)なしの長い寛衣のほか、ケープ、ペラリンpelerine、合羽(かっぱ)、引き回し、とんび、二重回しのような、袖なしの、肩に掛けるようにして着るもの。また、フランス各地の民俗服や、キリスト教のある宗派の修道僧の聖職服にみられるような、袖なし、フード付きのゆったりした外衣などがある。中世を通じて一般化し、19世紀後半からは、防寒、防雨、防塵(ぼうじん)などを目的とした袖付きの外套をもマントとよぶようになった。
1864年(元治1)の村上英俊の『仏語明要』に「manteau合羽」とあるように、日本では合羽capaとの混用がみられるが、幕府から引き継がれたフランス式陸軍用語からマントが日本語化し、昭和に入って公用語となった。明治末期から大正初期にかけて、小・中学校、旧制高校の男子生徒は黒か紺の羅紗(らしゃ)の、女児はグレイ、薄緑などの防寒用マントを用いた。また美術家や、青踏(せいとう)社を中心とする「新しい女」も着用した。第二次世界大戦後は女性のファッションのなかにその名と姿をとどめている程度である。
[田村芳子]
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