日本大百科全書(ニッポニカ) 「エウリコ」の意味・わかりやすい解説
エウリコ
えうりこ
Eurico
(?―484)
西ゴート王国の国王(在位466~484)。西ゴート人のテオドリック王の息子として生まれ、先任者たる兄テオドリック2世を殺害したのち、国王の地位につく。彼は厳格なアリウス派信奉者であったが、カトリックとの闘いは熾烈(しれつ)を極めるほどのこともなく、司教のなかには縁故を保つ者さえあったといわれる。しかし、ローマ帝国の権威のもとに服しながら残存を図るという地位に甘んじることを捨て、475年にはローマ人との同盟関係の廃棄を通告した。それ以前にはローマ人およびスエビ人との接触に努めたが、すでに467年にはスエビ人と、469年にはローマ人との戦端が開かれ、フランク人やブルグント人をも打破して、西ゴートの勢力は四囲に伸張された。「イスパニア全土とガリア全土を占有した」と豪語する彼の支配圏は、実際にはフランス南西部とスペイン北東部にあり、トゥールーズ王国ともよばれている。内政にあっては、ゲルマン人支配者として初めて固有の民族のための法典を編纂(へんさん)している。息子アラリックは王位継承者である。
[本村凌二]
『P・クルセル著、尚樹啓太郎訳『文学にあらわれたゲルマン大侵入』(1974・東海大学出版会)』