日本大百科全書(ニッポニカ) 「エスチオメーヌ」の意味・わかりやすい解説
エスチオメーヌ
えすちおめーぬ
esthiomène フランス語
esthiomene 英語
慢性陰門潰瘍(かいよう)ともいい、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(にくがしゅ)の特殊型とみられる疾患。女性性器の外陰部に慢性の潰瘍や象皮病様の肥厚がみられ、直腸にも狭窄(きょうさく)をおこす。治りにくく慢性の経過をたどり、外陰および肛門(こうもん)部に変形がみられる。痛みを訴えることもあるが、自覚症状はほとんどない。なお、鼠径リンパ節の炎症性腫脹(しゅちょう)(よこね)は男性に比べ女性では少ないが、クラミジアの一種による鼠径リンパ肉芽腫と同一の疾患で、これは梅毒、淋病(りんびょう)、軟性下疳(げかん)に次ぐ性病との意味から第四性病ともよばれる。この第四性病の女性にみられる一現象がエスチオメーヌであり、不衛生な性交の後、多くは2~3週間後に、外陰、尿道口、腟壁(ちつへき)などに軽微で見逃されやすい原発巣をつくって発症するが、病原体のウイルスはリンパの流れに沿って広がり、外陰、肛門、直腸に属するリンパ障害をおこしてエスチオメーヌとなる。化学療法の進歩に伴い激減している。語源は侵食するという意味のギリシア語である。
[新井正夫]