語源(読み)ごげん(英語表記)etymology

翻訳|etymology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

語源
ごげん
etymology

個々の単語のいちばん初めの音形と意味。より広義には,それから現在までの音形・意味の変化すべてを含むが,この意味では語史 (語誌) と呼ばれるほうが普通。語源学は古代ギリシアの時代からあり,「語源」という用語はギリシア語で「語の真の意味」 étymonに由来する。音形と意味との結びつきを知りたいという欲求は人間の素朴な興味意識であるが,これが逆に語形変化を引起すこともある (→通俗語源説 ) 。科学的な語源学の与える語源は,文献のうえでさかのぼりうる最古の音形・意味であるか,あるいは,比較方法によって推定される再構形である。

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百科事典マイペディアの解説

語源【ごげん】

個々の単語の原義。語の形式と意義との結合の発生に関する疑問は古代のインド,ギリシアにもみられるが,本格的な語源の研究,すなわち語源学は19世紀に始まる。印欧語などでは,比較言語学によってかなり語源をさかのぼることが可能である。言語学的方法によらず,たとえば〈ネコ〉を〈ネずみをコのむ〉の意とするような解釈は通俗語源,民間語源学などと呼ばれる。
→関連項目上代特殊仮名遣い名語記

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世界大百科事典 第2版の解説

ごげん【語源 etymology】

語原とも書く。日ごろ使っている言葉の一つ一つの語彙について,なぜそういうのかを問うことはほとんど意味がないし,また問う必要もない。なぜなら,我々はそれらの形を親の世代からただ継承しているにすぎず,また勝手にそれらを変更することも許されないからである。にもかかわらず語の語源etymology――これは古代ギリシア語のetymologia〈(語の)真の意味の探求〉に発する――を考えるということは,毎日なにげなく使っている言葉に対する歴史的な反省からはじまる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

語源
ごげん

ある単語(あるいは連語)が、なぜそういう意味に用いられるようになったかという由来を考えたとき、その由来を「語源」という。たとえば、別れの挨拶(あいさつ)として、「あばよ」ということがあるが、これは「案配(あんばい)良う」の転じた形とされる。また「案配」は、塩味と酸味の意あるいは味加減の意である「塩梅(えんばい)」と、物事を順序よく並べる意の「按排(あんばい)」が混合した語である。このように、語源を研究する言語学の一部を「語源学」または「語源論」といい、英語のetymologyにあたる。etymologyの語源はギリシア語のtumon「語の真の意味」にさかのぼる。これは当時の、語源的意味が真の意味であるという考え方を反映しているが、誤解を招きやすい。後の時代からみれば、語源的意味は単に古い意味にすぎず、真の意味というものは、後の各時代ごとに認められる語の諸用法のなかに潜む中心的な意味である。外国語の例を付け加えると、英語のmuscle「筋肉」はラテン語のmusculus「小さなネズミ」に由来する。これは筋肉の形や動くさまをネズミに見立てたものである。このmus-の部分が英語のmouse「ネズミ」に対応する。同じような語形上の対応が英語のhouse「家」とhusband「夫」の間にみられる。このhus-は「家」であり、husbandは語源的には「家の主人」をさした。英語のcamera「カメラ」とchamber「部屋」は同一のギリシア語kamr「筒形天井の部屋」に由来する。この語がラテン語に借り入れられ、フランス語の時代になったとき、形がchambreに変わったが、この時点で英語に借り入れられた。cameraのほうは、ラテン語のcamera obscura「暗い箱」の略形である。なお、民衆が本来の語源と異なる解釈を加えることを「語源俗解(民間語源)」と称する。たとえば、ダイダイ(橙)の絞り汁を「ぽんず」というが、本来オランダ語のponsから出たもので、ポンスと発音された。しかし、ポンスのスが酢の意であるという意識が生じたため、ポンズと発音されるようになった。英語のpenthouse「屋上家屋」は古くはpentisであったのを、「家」という意識からpent houseに変えた。このように、民衆の解釈が、語の形や意味を変えたりすることもあるので、注意を要する。[山口佳紀・国広哲弥]

語源研究の問題点

単語は、音と意味との結合体であるから、語源を考える場合、音と意味とのそれぞれについて説明に無理があってはならない。たとえば、「案配良う→あばよ」について、アンバイヨウ→アバヨの音変化は十分におこりうることである。また、「案配」は物事のぐあいの意であり、それが「良くあれ」と言い掛けることは、別れの挨拶としてふさわしい意味をもつ。このように、語源の説明は、音と意味との両面から支持されるものでなくてはならない。この点、江戸時代あるいはそれ以前の語源説には信頼できないものが多い。とくに、音変化の可能性に関する実証的な観察を欠いていたために、その面の配慮が十分でないものが目だつ。たとえば、「たか(鷹)」を「つまかた(爪堅)」の転とするたぐいで、意味的にはありえないことではないが、ツマカタ→タカというような音変化がおこるとはとうてい考えられず、信ずるに足りない。[山口佳紀・国広哲弥]

語源と語史

語源を考える場合に必要なのは、その単語(連語)の素姓、経歴である。いつごろ、どんなふうに現れ、古い意味はどんなであったか、その後どんな変化をたどったかについて知らないと、正しい語源に到達することが困難である。そうした個々の語の経歴を「語史」といい、その経歴を記したものを「語誌」とよぶが、語源研究は、語史に関する精確な知識に基づかないと、思わぬ誤りに陥ることがある。たとえば、松毬(まつかさ)のことを「まつぼっくり」という。「まつ」が松の意であることは明らかであるが、「ぼっくり」は、このままの形で考えても正解に達することはまずあるまい。しかし、この語が古く「まつふぐり」であった事実がわかれば、「ふぐり」は陰嚢(いんのう)のことで、その形状から松の陰嚢の意で命名されたことが判明する。[山口佳紀・国広哲弥]

語源研究の限界

「つばき(唾)」という語は、唾液の意の「つ」に「吐き」のついた形で、この「つ」は「固唾(かたづ)を飲む」「虫唾(むしづ)が走る」などにも現れる。ここまでは説明できるが、唾液をなぜ「つ」というか、嘔吐(おうと)することをなぜ「吐く」というかという点になると、その説明はきわめて困難になる。
 こういう場合、安易に周辺の外国語を取り上げ、それと結び付けて語源を説こうとするものがあるが、その点は十分慎重でなくてはならない。[山口佳紀・国広哲弥]
『阪倉篤義著『日本語の語源』(講談社現代新書)』

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世界大百科事典内の語源の言及

【ラテン語教育】より

…しかし,これら自由学三科に固有に属するもののほかにも,いくつかの言語観,言語使用が,ラテン語の役割を広げた。それは第1には,語源論である。セビリャのイシドルスの《語源録または事物の起源》に典型的にみられるように,個々の語彙は,存在の形而上学的秘密を蔵しており,語の起源を探索し,それを正確に意識することは,とりもなおさず,存在の深奥を解明することであると考えられた。…

※「語源」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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