改訂新版 世界大百科事典 「オオワラジカイガラムシ」の意味・わかりやすい解説
オオワラジカイガラムシ
Drosicha corpulenta
半翅目ワタフキカイガラムシ科の昆虫。雌雄異形で雄成虫は1対のすす色の翅を備え,一見双翅類に似る。雌成虫は幼虫期のものとほぼ同形で無翅。楕円形で体環節の表す形状がわらじに似ることからこの名がある。日本最大のカイガラムシで,成熟すると体長10~15mmに及び,体表には淡く白粉状の分泌物を装う。終生,あしを有し,歩行,移動が可能で,腹部に気門をもつことなどで原始的なカイガラムシとされる。日本原産で,カシ,クリ,シイ,マテバシイなどの枝,幹に寄生し,しばしば都市部の公園に多発する。年1回の発生,初夏のころ成熟して寄生植物の粗皮下や落葉中に綿塊状の卵囊を産みつける。卵は12月末~1月に孵化(ふか)し,寄生植物を求めて歩行する初齢幼虫はしばしば群れをなして人家に侵入して騒がれるため,不快昆虫として扱われている。
執筆者:河合 省三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報